CASE 01
建替えを機に底地を買い取りたい借地人様
状況
老朽化した自宅の建替えを考えているが、承諾料や地代の負担を考えると、この機会に底地を買い取りたい。地主に打診したいが、いくらを提示すべきか分からない。
評価資料を用意した場合
第三者に売る場合の底地価格と、借地人にとっての価値の上限を示し、増分の配分の考え方を整理することで、根拠のある提示額を用意できます。
TOPIC / 地主・借地人間の買取り
借地権を地主に買い取ってもらう相場は、第三者に売るときの相場とは同じになりません。借地権と底地が一つになると土地の価値が高まるためで、その増分をどう分けるかが価格交渉の核心です。


執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal|不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号
借地権(建物の所有を目的として土地を借りる権利)と底地(借地権が付いている土地の所有権)は、一つの土地を二人で分け持っている状態です。この状態の土地は、地主から見れば自由に使えず、借地人から見れば建替えや売却のたびに地主の承諾が必要という、互いに制約のかかった権利になっています。
ところが、借地人が底地を買う、あるいは地主が借地権を買うと、土地は一人の完全な所有権に戻ります。承諾や地代のやりとりが不要になり、建替えも売却も自由になり、担保としても使いやすくなります。その結果、借地権の価格と底地の価格を単純に足した金額より、完全な所有権の土地の価格のほうが高いという状態が生じることがあります。この差が「併合による増分」です。
つまり、借地権を地主に買い取ってもらう相場は、第三者が買う場合の価格(市場で見知らぬ買い手が付ける価格)とは異なり、地主にとっての価値を反映した水準で成立し得ます。底地を借地人に売る場合も同じ構造です。第三者に売ると地主の承諾と譲渡承諾料が必要になる借地権も、地主が買い手なら承諾料の問題は生じません。
不動産鑑定評価基準(国土交通省が定める鑑定評価のルール)は、価格の種類の一つとして「限定価格」を定めています。要約すると、不動産を他の不動産と併合して取得する場合などに、市場で一般に成立する価格(正常価格)とは乖離し、買い手が相対的に限定される場面で、その取得部分の市場価値を適正に表示する価格です。
そして評価基準は、限定価格を求める場合の例示の筆頭に「借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合」を挙げています。借地・底地の当事者間の売買は、評価基準が想定する典型場面なのです。
さらに各論では、「底地を当該借地権者が買い取る場合における底地の鑑定評価に当たっては、当該宅地又は建物及びその敷地が同一所有者に帰属することによる市場性の回復等に即応する経済価値の増分が生ずる場合があることに留意すべき」とされています。私たち鑑定士は、この増分がどの程度生じるのか、それをどう配分するのが合理的かを、個別の事情に即して判断し、その過程を鑑定評価書に示します。
具体的な数字で考えてみます。以下はいずれも説明のための仮の数値です。
完全な所有権の土地
5,000万円
借地権+底地が一つになった状態
借地権(第三者価格)
3,000万円
更地×60%
底地(第三者価格)
約1,333万円
地代収入から見た価格
併合による増分
約667万円
※ 更地価格5,000万円、第三者に売る場合の借地権価格3,000万円・底地価格約1,333万円は、いずれも説明のための仮の数値です。
この例で地主が借地権を買う場合、借地人は第三者に売れば3,000万円を得られるので、それを下回る価格では売る理由がありません。一方の地主は、借地権を手に入れると手持ちの底地(約1,333万円)が5,000万円の完全な所有権に変わるため、理屈の上では最大で約3,667万円まで払っても損をしません。交渉の幅は3,000万円〜約3,667万円ということになり、どこで決まるかは増分の配分次第です。
| 配分の考え方 | 借地人への配分 | 地主への配分 | 地主が借地権を買う価格 |
|---|---|---|---|
| 増分をすべて地主に帰属させる | 0円 | 約667万円 | 3,000万円 |
| 増分を折半する | 約333万円 | 約333万円 | 約3,333万円 |
| 借地権・底地の価格比で配分する | 約462万円 | 約205万円 | 約3,462万円 |
| 増分をすべて借地人に帰属させる | 約667万円 | 0円 | 約3,667万円 |
※ 価格比による配分は、借地権3,000万円:底地約1,333万円の比で増分約667万円を按分した計算です。配分の方法は一つに決まっているわけではなく、鑑定評価では契約の経緯、地代の水準、双方が売買を必要とする事情などを踏まえて判断します。
反対に、借地人が底地を買う場合も同じ考え方です。地主は第三者に売れば約1,333万円を得られ、借地人は底地を取得すると借地権(3,000万円)が完全な所有権(5,000万円)に変わるため、最大で2,000万円まで払っても損をしません。交渉の幅は約1,333万円〜2,000万円です。
ここで分かるのは、割合法の「底地40%」(2,000万円)が、借地人にとっては支払える上限の側にあるということです。当事者の一方がこの数字をそのまま主張すると、話し合いがかみ合わなくなる理由がここにあります。

地主・借地人の間で買取りの話が出たら、双方の提示額がどの前提で組み立てられているかを確認することから始めませんか。増分の考え方を含めて、評価の進め方をご説明します。
当事者間の売買価格を相談する初回相談無料/ご相談内容を相手方に伝えることはありません
地主・借地人のどちらにも買い取る資金や意向がない場合でも、併合による増分を生かす方法があります。
地主と借地人が協力し、借地権と底地をそろえて第三者に売る方法です。買い手は完全な所有権の土地として購入できるため、別々に売るより高く売れることが期待でき、その売却代金を地主と借地人で分け合います。ここでも、代金をどの割合で分けるかが論点になり、前の章の配分の考え方がそのまま使えます。
土地を二つに分け、一方を地主の完全な所有権、他方を借地人の完全な所有権とする方法です。借地人は借地権の一部を地主に、地主は底地の一部を借地人に渡し、互いの権利を交換します。お金のやりとりを抑えて借地関係を解消できる一方、分けた後の土地それぞれが建物を建てられる広さ・形状・接道を満たすか、建物をどう扱うかといった物理的な条件が前提になります。どの割合で土地を分ければ等価になるかは、分けた後の各土地の価格と、借地権・底地の価格を比べて判断します。
買取業者に売る
第三者の立場で買う
当事者間で売買・交換する
地主と借地人が直接合意する
当事務所は宅建業者ではないため売買の媒介・買取りは行いません。売却は地元の宅建業者をご紹介できます(紹介料は頂きません)。交換や同時売却に伴う税務上の取扱いは税理士に、契約関係や合意書の内容は弁護士にご確認ください。弁護士が決まっていない方には、弁護士のご紹介も可能です。
私たち鑑定士は売買の当事者ではありません。依頼者が地主様でも借地人様でも、評価基準に従って価格を導きます。交渉の目安なら価格等調査報告書(15万円〜・税別)、合意の根拠として相手方に示す正式な資料なら鑑定評価書(30万円〜・税別)が適しています。相手方から提示された金額の検証だけなら、セカンドオピニオン(5万円〜・税別)もご利用いただけます。
CASE
※ 実際のご相談内容ではなく、起こりうる状況として作成したシナリオです。実在の人物・案件とは関係ありません。
CASE 01
状況
老朽化した自宅の建替えを考えているが、承諾料や地代の負担を考えると、この機会に底地を買い取りたい。地主に打診したいが、いくらを提示すべきか分からない。
評価資料を用意した場合
第三者に売る場合の底地価格と、借地人にとっての価値の上限を示し、増分の配分の考え方を整理することで、根拠のある提示額を用意できます。
CASE 02
状況
高齢の借地人から、施設入居を機に借地権を買い取ってほしいと求められた。借地人側は路線価図の借地権割合で計算した金額を示している。
評価資料を用意した場合
割合法の数字と、第三者に売る場合の借地権価格、地主にとっての併合の価値を並べることで、交渉の幅を具体的に把握できます。
同じとは限りません。地主が借地権を取得すると土地が完全な所有権に戻り、借地権と底地が別々のときより価値が高まることがあります。不動産鑑定評価基準は、こうした併合を目的とする売買の価格を「限定価格」として、第三者間の価格(正常価格)と区別しています。増分をどう配分するかで、成立し得る価格の幅が決まります。
どちらかに有利になるよう決まるものではありません。併合によって生じる増分を、地主・借地人それぞれの事情や交渉力を踏まえてどう配分するかの問題です。鑑定評価では配分の考え方と根拠を明示するため、双方が同じ数字を土台に話し合えます。
できます。双方が同じ鑑定評価書を前提に話し合う方法は、互いの提示額の根拠を一本化でき、交渉が進みやすくなる面があります。費用の分担方法もご相談ください。
交換に関する税務上の取扱いや特例の適用可否は、個別の事情によって異なります。税理士にご確認ください。当事務所は交換の前提となる借地権・底地の価格の評価を担当します。

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。