TOPIC / 借地権の価格

借地権の売却相場はいくら?──価格の決まり方と売却先による違い

借地権の売却相場は、借地権割合で見当をつけることはできても、その数字どおりに売れるとは限りません。借地権の価格がどう決まり、売却先によって手取りがどう変わるのかを、不動産鑑定士が整理します。

借地の上に建つ住宅

このページの結論

  • 借地権(建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権)は、単独で売買できる財産です。まずは「更地価格×借地権割合」で見当をつけます。
  • 借地権割合は税務上の目安にすぎず、地代の水準・残存期間・建替えの自由度・地主との関係で実際の価格は上下します。
  • 売却先は地主・第三者・買取業者の3つ。第三者に売るには地主の承諾と譲渡承諾料が必要で、承諾が得られなければ借地非訟という手続もあります。
  • どのルートでも、動く前に根拠のある金額を押さえておくことが、足元を見られないための備えになります。
吉田 健人

執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal|不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号

借地権の売却相場は「借地権割合」で見当をつける

借地権とは、借地借家法の定義で「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」をいいます。土地そのものを所有しているわけではありませんが、借地権には財産的な価値があり、建物とあわせて売買の対象になります。

借地権の売却相場の見当をつける出発点が、借地権割合(更地価格のうち借地権が占める割合)です。国税庁の路線価図には、路線価の数字の後ろにA(90%)からG(30%)までの記号で地域ごとの借地権割合が示されています。調べ方は借地権割合のページで解説しています。

借地権割合による借地権価格の目安(説明のための仮の数値)

更地価格

2,000万円

借地権が付いていない場合

借地権割合

60%

路線価図の記号D

借地権価格の目安

約1,200万円

※ 更地価格2,000万円・借地権割合60%は説明のための仮の数値です。実際の売却価格を示すものではありません。

ここで注意したいのは、更地価格そのものも「路線価×面積」ではないという点です。路線価は地価公示価格等の8割程度を目安に設定されているため、路線価をそのまま使うと出発点から低くなります。目安を出すなら、周辺の取引水準から見た更地価格に割合を掛けるのが筋です。

借地権割合どおりに売れない理由──価格を上下させる要因

借地権割合は、あくまで相続税などの課税のために地域ごとに定められた目安です。実際の売買では、次のような個別の事情によって価格が上下します。

  • 地代の水準:地代が周辺の水準より高ければ、買い手にとっては毎月の負担が重く、借地権の価格は下がる方向に働きます。逆に地代が低ければ、借地人の得は大きく、価格を押し上げます。
  • 契約の残存期間と更新の見込み:旧法借地権か、平成4年8月1日以降の普通借地権か、定期借地権かで、借地人が土地を使い続けられる見込みが変わります(旧法と新法の違い)。
  • 建替えの自由度:建物が古く建替えが必要な場合、地主の承諾や承諾料が見込まれるかどうかが、買い手の判断を左右します。
  • 地主との関係:承諾がスムーズに得られるか、過去にトラブルがないかは、買い手にとって大きな関心事です。

鑑定士の視点──借地権の価格は「賃料差額」から生まれる

不動産鑑定評価基準は、借地権の価格の中心を、長期間にわたって土地を独占的に使える安定的な利益と、「賃料差額」(本来あるべき適正な地代と、実際に支払っている地代との差)およびその持続期間に基づく経済的利益の現在価値のうち、慣行的に取引の対象となっている部分と位置づけています。地代が安いほど借地権の価格が高くなるのは、この賃料差額が大きくなるためです。

また評価基準は、借地権取引の慣行の有無と成熟の程度は都市や地域によって異なり、「借地権の存在は必ずしも借地権の価格の存在を意味しない」としています。借地権の取引が活発な地域では、取引事例に基づく比準価格、土地残余法による収益価格、賃料差額を還元した価格、借地権割合により求めた価格を関連づけて評価します。借地権割合による価格は、その一つにすぎません。

さらに、実際に売るのは「借地権付建物」(借地権と、その上の建物のセット)であることがほとんどです。評価基準では、自用の借地権付建物は積算価格・比準価格・収益価格を関連づけて評価するとされています。建物の状態や残りの耐用年数も価格に影響します。

借地権の売却先は3つ──地主・第三者・買取業者

借地権の売り先は大きく3つに分かれ、価格水準と手続の負担がそれぞれ異なります。

ルート1:地主に買い取ってもらう

地主が借地権を買い取れば、地主は完全な所有権を回復できます。地主にとってもメリットが大きいため、条件次第では第三者に売るより有利な価格が成立し得ます。譲渡承諾料の問題も生じません。まずは地主の意向を打診するのが自然な順序です。価格の考え方は地主・借地人間の買取りのページで詳しく扱っています。

ルート2:第三者に売る(地主の承諾が必要)

第三者に売る場合は、地主の承諾を得るのが原則です(民法612条は賃借権の無断譲渡を禁じています)。市場の水準に近い価格で売れる可能性がある一方、借地であることを理由に購入を避ける買い手も多く、住宅ローンの利用に制約が出ることもあるため、所有権の物件より流通性は落ちます。

ルート3:買取業者に売る

借地権を専門に扱う買取業者に売る方法です。地主との交渉を含めて任せられ、現金化が早い反面、業者は安く買いたい当事者であり、転売の利益とリスクを見込む分だけ価格は低くなる傾向があります。急いで手放したい場合の選択肢です。

借地権の売却先の比較
売却先価格水準の傾向手続の負担
地主高くなり得る軽い(譲渡承諾料は不要)
第三者市場の水準に近い重い(地主の承諾と承諾料が必要)
買取業者低くなる傾向(転売の利益とリスクを見込む)軽い(早い)

当事務所は宅建業者ではないため売買の媒介・買取りは行いません。売却は地元の宅建業者をご紹介できます(紹介料は頂きません)。

資料を示しながら説明する様子

借地権の売却相場の見当がつかない、買取業者の提示額が妥当か分からない。そんなときは、地代や契約条件をうかがったうえで、評価の要否と費用の見当をお伝えします。

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避けて通れない地主の承諾と譲渡承諾料

第三者に借地権を売るときは、地主から承諾を得る際に譲渡承諾料(名義変更料とも呼ばれます)を支払うのが一般的です。法律に金額の定めはありませんが、借地非訟の実務では、裁判所が譲渡を許可する場合の承諾料は借地権価格の10%程度を基準に諸事情を考慮して定められることが多いと紹介されています(日本地主家主協会の解説による)。ただしこれは裁判所が許可する場合の目安であり、当事者間の交渉額を拘束するものではありません。

譲渡承諾料を差し引いた手取りのイメージ(説明のための仮の数値)
項目金額備考
借地権価格の目安1,200万円更地2,000万円×60%
譲渡承諾料(10%とした場合)約120万円一般に言われる目安で試算
承諾料差引後約1,080万円このほか売却の諸費用・税金がかかる

※ いずれも説明のための仮の数値です。承諾料の負担者や額は地域の慣行と交渉で異なります。

評価基準も、名義書替料を一般に譲受人と譲渡人のどちらが負担する地域かを考慮すべきとしており、誰がいくら負担するかは地域の慣行によって異なり得ます。承諾料の考え方は譲渡承諾料のページで詳しく解説しています。

地主が承諾しないとき──借地非訟

借地権が土地の賃借権である場合、地主に不利となるおそれがないのに承諾が得られないときは、借地人は裁判所に「借地非訟」を申し立て、承諾に代わる許可を求めることができます(借地借家法19条1項)。裁判所は許可にあたって承諾料などの財産上の給付を命じることがあり、原則として鑑定委員会の意見を聴きます。また、地主の側が自ら建物と借地権を買い取る旨を申し立てる「介入権」の制度もあり(同条3項)、その場合は裁判所が相当の対価を定めます。

申立てから決定までには相応の時間がかかり、代理人は原則として弁護士に限られます。まずは交渉での合意を目指すのが現実的です。手続の詳細は借地非訟のページをご覧いただき、具体的な見通しは弁護士にご確認ください。弁護士が決まっていない方には、弁護士のご紹介も可能です。

借地権の売却相場を鑑定評価で押さえてから動く

借地権の価格は目安が立てにくく、地主・買い手・業者のいずれと交渉するにしても、根拠のない希望額では相手の数字に引きずられがちです。私たち鑑定士は売買の当事者ではないため、借地権割合だけでは表せない地代の水準や契約条件、建物の状態を反映した金額を、中立の根拠として示せます。

  • 業者の提示額や地主の提示額を確かめたい:セカンドオピニオン(5万円〜・税別)
  • 売却の方針を決めるため価格の見当を知りたい:価格等調査報告書(15万円〜・税別)
  • 地主への売渡し価格を合意したい、正式な資料が必要:鑑定評価書(30万円〜・税別)

CASE

借地権の売却で想定されるケース

※ 実際のご相談内容ではなく、起こりうる状況として作成したシナリオです。実在の人物・案件とは関係ありません。

CASE 01

相続した借地上の実家を売りたい借地人様

状況

親から相続した実家が借地の上に建っている。住む予定はなく売りたいが、いくらで売れるのか、地主に何から話せばよいのか分からない。

評価資料を用意した場合

借地権割合による目安に加え、地代や残存期間を踏まえた価格の見当をつけることで、地主への買取りの打診、第三者への売却、業者への売却を同じ物差しで比べられます。

CASE 02

地主から承諾料として高額な金額を示された借地人様

状況

第三者への売却について地主に承諾を求めたところ、承諾料として想定より高い金額を示された。前提となる借地権価格の根拠が示されていない。

評価資料を用意した場合

承諾料の基礎となる借地権価格を中立の立場で評価することで、交渉の土台をそろえられます。合意に至らない場合の借地非訟の見通しは弁護士と検討します。

よくあるご質問

借地権の売却相場は、路線価図の借地権割合を掛ければ分かりますか。

見当をつける出発点にはなりますが、そのまま売却価格になるわけではありません。路線価図の借地権割合は相続税などの課税のための割合で、実際の売買では地代の水準、契約の残存期間、建替えの自由度、地主との関係などで価格が上下します。不動産鑑定評価基準も「借地権の存在は必ずしも借地権の価格の存在を意味しない」としています。

借地権を売るとき、譲渡承諾料はいくら払うのが相場ですか。

借地非訟の実務では、裁判所が譲渡を許可する場合の承諾料は借地権価格の10%程度を基準に諸事情を考慮して定められることが多いと紹介されています(日本地主家主協会の解説による)。ただしこれは裁判所が許可する場合の目安で、当事者間の交渉額を拘束するものではありません。

地主が借地権の売却を承諾してくれません。売ることはできませんか。

借地の賃借権の場合、地主に不利となるおそれがないのに承諾しないときは、裁判所に承諾に代わる許可を求める借地非訟の手続があります(借地借家法19条)。ただし時間と費用がかかり、代理人は原則として弁護士に限られます。まずは交渉による合意を目指し、手続の見通しは弁護士にご確認ください。

買取業者の提示額が借地権の相場より安いように感じます。

買取業者は転売の利益とリスクを見込んで買い取るため、提示額は市場で第三者に売る場合より低くなる傾向があります。セカンドオピニオン(5万円〜・税別)で、提示額の前提に不合理な点がないかを検証できます。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。

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