TOPIC / 譲渡承諾料・名義変更料

借地権の譲渡承諾料の相場──「借地権価格の10%」はどこまで当てはまるか

借地権の譲渡承諾料(名義変更料)の相場は、一般に「借地権価格の10%程度」と言われます。ただしこれは借地非訟で裁判所が定める場合の目安であり、あなたの借地で妥当な譲渡承諾料は、借地権価格そのものと契約の経緯から個別に確かめる必要があります。

借地権の譲渡承諾料を話し合う地主と借地人

このページの結論

  • 借地権の譲渡承諾料に法律上の定めはありません。「借地権価格の10%程度」は、借地非訟で裁判所が定める場合の目安として紹介されている数字です。
  • 10%を掛ける前の「借地権価格」が違えば、承諾料も大きく変わります。路線価の借地権割合をそのまま使うと、実際の取引価格とずれることがあります。
  • 地主が承諾しない場合は、借地非訟で裁判所に承諾に代わる許可を求められます。地主側には自ら買い受ける介入権があります。
  • 私たち鑑定士は売買の当事者ではありません。地主様・借地人様のどちらから依頼を受けても、同じ基準で借地権価格と承諾料の根拠を示します。
吉田 健人

執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal|不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号

譲渡承諾料(名義変更料)とは──なぜ地主の承諾が要るのか

借地の上に建つ家を売ると、建物と一緒に借地権(建物の所有を目的として土地を借りる権利)も買主に移ります。借地権が土地の賃借権である場合、民法612条により、賃借権を無断で他人に譲渡・転貸することはできません。無断で譲渡すれば、契約の解除を主張される原因になり得ます。

そこで借地人(借地権者)は、売却の前に地主(借地権設定者)の承諾を得るのが通常で、その承諾の対価として支払われるのが譲渡承諾料です。「名義変更料」「名義書替料」とも呼ばれます。

注意したいのは、譲渡承諾料の額を定めた法律の規定はないという点です。いくら払うかは本来、当事者の話合いで決まります。そのため、地主様は「いくら請求してよいのか」、借地人様は「この請求額は払うべき水準なのか」が分からず、話が止まりがちです。

なお、当事務所は宅地建物取引業者ではないため、売却の手続そのものはお手伝いできません。売却は地元の宅建業者をご紹介できます(紹介料は頂きません)。私たちの役割は、承諾料と借地権価格の根拠を示すことです。

譲渡承諾料の相場として言われる「借地権価格の10%」

借地権の譲渡承諾料の相場としてよく引用されるのが「借地権価格の10%程度」という数字です。日本地主家主協会(地主・家主の団体)のウェブ解説では、借地非訟で借地権の譲渡・転貸の許可をする場合の承諾料について、概ね借地権価格の10%程度を基準とし、諸事情を考慮して決定されると紹介されています。同協会のQ&Aでも、譲渡承諾料は借地権価格の10%程度が一つの目安とされています。

ここで押さえておきたいのは次の2点です。

  • 裁判所が許可する場合の目安であること:当事者間の交渉額を拘束するものではありません。契約の経緯や地域の慣行によって、これより高い額・低い額で合意されることもあります。
  • 「借地権価格」が掛け算の土台であること:10%という率よりも、10%を掛ける前の借地権価格をいくらと見るかのほうが、金額への影響ははるかに大きくなります。
譲渡承諾料の試算の組立て(説明のための仮の数値)

更地価格

5,000万円

仮の数値

借地権割合

60%

路線価図のD

承諾料の目安

10%

一般に言われる率

譲渡承諾料の目安

約300万円

借地権価格3,000万円×10%

※ 説明のための仮の数値です。借地権価格を路線価の借地権割合で求めたのは試算の便宜上で、実際の借地権価格は個別に評価する必要があります。

借地権価格の見方で承諾料はこれだけ変わる(説明のための仮の数値)
前提借地権価格10%で試算した承諾料
借地権割合60%をそのまま使った場合3,000万円約300万円
地代が高く、借地権の取引価格が低いと評価された場合2,500万円約250万円
残存期間が長く、建替えの自由度も高いと評価された場合3,250万円約325万円

※ いずれも説明のための仮の数値です。率を同じ10%としても、土台の借地権価格の差がそのまま承諾料の差になります。

資料を示しながら説明する様子

提示された譲渡承諾料が、どの借地権価格を前提にしているかを確かめたい方へ。契約書と提示額の資料をお送りいただければ、検証の進め方と費用をお伝えします。

承諾料の根拠を確かめる

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譲渡承諾料は誰が払うのか──負担者は契約と慣行で決まる

「借地権を売るときの承諾料は、売主と買主のどちらが払うのか」も迷いやすい点です。結論から言えば、法律で負担者が決まっているわけではなく、契約書の定め、地域の慣行、売買の当事者間の取り決めによります。

不動産鑑定評価基準(国土交通省が定める、不動産鑑定士が鑑定評価を行う際の統一的な基準)も、借地権の評価にあたって考慮すべき点として「名義書替料を一般に譲受人又は譲渡人のいずれが負担する地域か」を挙げています。つまり、負担者は地域によって異なり得ることが評価の前提として織り込まれているのです。

実務上は、売主である借地人様が地主様から承諾を取り付けたうえで売却し、承諾料の負担は売買契約で取り決めるのが通常の進め方です。負担者によって売主の手取り額は大きく変わりますから、売買条件を固める前に承諾料の額と負担者を明確にしておくことをおすすめします。

地主が承諾しないとき──借地非訟と介入権

地主が承諾しない、あるいは承諾料の額で折り合わない場合、借地人は裁判所に「承諾に代わる許可」を求めることができます(借地借家法19条1項)。これが借地非訟(借地に関する紛争を、通常の訴訟ではなく裁判所の非訟手続で扱う制度)です。

  • 許可の要件:第三者が借地権を取得しても地主に不利となるおそれがないのに、地主が承諾しないこと。
  • 考慮される事情:借地権の残存期間、借地に関する従前の経過、譲渡を必要とする事情その他一切の事情(同条2項)。
  • 財産上の給付:裁判所は、当事者間の利益の衡平を図るため、許可を財産上の給付(承諾料の支払)に係らしめることができます(同条1項)。
  • 介入権:地主は、裁判所が定める期間内に、自ら建物と借地権の譲渡を受ける旨を申し立てることができます。この場合、裁判所が相当の対価を定めて命じます(同条3項)。

裁判所は原則として、鑑定委員会(弁護士・不動産鑑定士・有識者などで構成される専門家の合議体)の意見を聴いたうえで判断します。許可の裁判が出た後は、効力発生から6か月以内に建物を譲渡しないと許可は効力を失う点にも注意が必要です(同法59条。裁判で期間の伸縮が可能)。

鑑定士の視点:譲渡承諾料の妥当性は「借地権価格」の精度で決まる

承諾料の議論は「何%か」に集中しがちですが、私たち鑑定士が最初に確かめるのは、掛け算の土台になる借地権価格です。不動産鑑定評価基準は、借地権の価格を、借地権者に帰属する経済的利益として捉えます。その中心は、土地を長期間安定して使える利益と、「賃料差額」(本来あるべき地代と、実際に支払っている地代との差)がどれだけの期間続くかに基づく経済的利益のうち、慣行的に取引の対象となっている部分です。

つまり、同じ場所・同じ更地価格の借地でも、地代が相場より低く抑えられていれば借地権の価値は高まり、地代が高ければ低くなります。路線価図の借地権割合(A〜Gの記号で示される相続税のための割合)はこうした個別事情を反映しないため、承諾料の土台としては粗い数字です。評価基準も「借地権の存在は必ずしも借地権の価格の存在を意味しない」と述べ、借地権取引の慣行の成熟の程度は地域によって異なるとしています。

また評価基準は、第三者への譲渡を契機として地代を改定する際、名義書替料が支払われるときはその額を総合的に勘案するとしています。承諾料と地代は切り離された話ではなく、承諾料を受け取る代わりに地代の改定幅を抑える、といった一体の交渉もあり得るということです。地代の水準については継続賃料(地代の改定)の解説もご覧ください。

断言しますが、承諾料の交渉で最も説得力を持つのは、率の相場ではなく、借地権価格の根拠です。当事務所では、交渉の目安には価格等調査報告書(15万円〜・税別)、借地非訟に提出する資料には鑑定評価書(争訟案件は60万円〜・税別を起点)、相手方の提示額の検証だけならセカンドオピニオン(5万円〜・税別)と、目的に応じた成果物をご提案します。

CASE

譲渡承諾料で想定されるケース

※ 実際のご相談内容ではなく、起こりうる状況として作成したシナリオです。実在の人物・案件とは関係ありません。

CASE 01

借地人:地主から高額な承諾料を提示され、売却が止まっている

状況

親から引き継いだ借地上の家を売りたい借地人様。地主様からは「更地価格の1割」を承諾料として求められました。借地権価格に対する割合で考えると、一般に言われる目安を大きく上回る水準です。

評価資料を用意した場合

借地権価格を地代水準・残存期間を踏まえて評価し、承諾料の目安との関係を資料で示すことで、率ではなく金額の根拠をもとに話し合う土台ができます。合意できない場合に借地非訟へ進むかどうかの判断材料にもなります。

CASE 02

地主:承諾料をいくら求めるべきか分からない

状況

借地人様から売却の承諾を求められた地主様。承諾はしてもよいと考えていますが、請求額の根拠がなく、低すぎても高すぎても後で困るのではと悩んでいます。

評価資料を用意した場合

借地権価格と、承諾を機に見直したい地代の水準をあわせて評価しておけば、承諾料と地代改定を一体で提案できます。第三者の鑑定士が示した根拠は、借地人様にも説明しやすい資料になります。

よくあるご質問

借地権の譲渡承諾料の相場は、更地価格の何%くらいですか。

一般に言われる目安は「借地権価格の10%程度」で、更地価格に対する割合ではありません。借地権価格は更地価格の一部ですから、たとえば借地権価格が更地価格の6割であれば、更地価格に対してはおおむね6%程度の水準になります。ただしこれは借地非訟で裁判所が定める場合の目安として紹介されているもので、当事者間の交渉額を拘束するものではありません。

名義変更料と譲渡承諾料は違うものですか。

呼び方の違いで、同じものを指すのが一般的です。東京地方裁判所の借地非訟の案内でも、裁判所が支払を命じる金銭について一般に「名義変更料」などといわれていると説明されています。不動産鑑定評価基準では「名義書替料」という言葉が使われています。

借地権の譲渡承諾料は、売主と買主のどちらが払うのですか。

法律で負担者が決まっているわけではありません。契約書の定め、地域の慣行、売買の当事者間の取り決めによります。不動産鑑定評価基準も、名義書替料を譲受人・譲渡人のいずれが負担する地域かを考慮すべき点として挙げています。売買契約の段階で負担者を明確にしておくことが大切です。

地主から借地権価格の20%の譲渡承諾料を求められました。払うしかないのでしょうか。

承諾料の額は法律で決まっていないため、提示額そのものが違法というわけではありません。一方で、合意できなければ借地非訟で裁判所に承諾に代わる許可を求める道があり、そこでは借地権価格の10%程度を基準に諸事情を考慮して定められることが多いと紹介されています。まずは前提となる借地権価格が妥当かを確かめることをおすすめします。手続の選択は弁護士にご確認ください。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。

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