借地権の更新料が払えない・高すぎるときは?解除される場合と交渉の進め方を不動産鑑定士が整理

借地権の更新料が払えない・高すぎると悩む借地人様へ。支払義務が生じる場合、不払いで解除が認められる判断基準(最高裁昭和59年判決)、地代の供託、請求額の確認方法と分割・地代への織り込みなどの交渉の進め方を不動産鑑定士が整理します。

著者:吉田 健人·読了 約14分
借地権の更新料が払えない・高すぎるときは?解除される場合と交渉の進め方を不動産鑑定士が整理

「地主から借地権の更新料として数百万円を請求されたが、とても払えない」「払えないと契約を解除されて、家を明け渡すことになるのだろうか」。借地の更新時期を迎えた借地人様から、こうしたご相談をいただきます。更新料は数十年に一度の支払いで、金額も大きくなりがちです。手元の資金で用意できず、途方に暮れている方も多いのではないでしょうか。

結論からお伝えします。借地権の更新料が払えないからといって、直ちに契約を解除されるわけではありません。そもそも借地借家法に更新料の支払義務を定めた規定はなく、支払義務があるかどうかは契約書の特約や当事者の合意によって決まります。ただし、更新料を支払う合意があるのに一方的に支払わず、話合いにも応じない場合には、信頼関係が壊れたとして解除が認められる可能性があります。大切なのは「払えない」まま放置せず、支払義務の有無を確認し、金額の根拠を示して分割や減額を話し合うことです。

この記事では、更新料が払えないときに起こり得ること、請求額が高すぎると感じたときの確認ポイント、交渉の進め方を、想定されるケースの試算を使って私たち鑑定士が整理します。

借地権の更新料が払えないと契約は解除されるのか

支払義務は「特約」や「合意」があるときに生じる

借地借家法には、更新料の支払義務を定めた規定がありません。最高裁昭和51年10月1日判決は、宅地の賃貸借の期間満了時に、地主の請求があれば当然に借地人に更新料の支払義務が生じるという慣習は認められないと判断しています。

したがって、まず確認すべきは、契約書に「更新時には更新料を支払う」といった特約(契約書に定めた特別な取り決め)があるか、あるいは更新の話合いで支払を合意したかです。特約も合意もなければ、更新料を支払う法的な義務がないと考えられる場合があります。支払義務の有無や特約の効力は個別の判断になりますので、弁護士にご確認ください。

解除が認められるかは「信頼関係」で判断される

一方で、更新料の支払を合意していたのに支払わなかった場合はどうでしょうか。最高裁昭和59年4月20日判決は、更新料の不払いが契約の解除原因となるかどうかは、更新料の性格や合意の経緯などの諸般の事情を総合考量し、具体的な事実関係に即して判断すべきとしました。そのうえで、更新料が更新後の契約の重要な要素として組み込まれ、当事者間の信頼関係を維持する基盤をなしていた事案で、不払いを理由とする解除を認めています。

この事案は、借地人の過去の契約違反を不問とする見返りとして更新料の支払を合意したという特殊な経緯があったと紹介されています。つまり「更新料を1回払わなかったら必ず解除される」という意味ではありません。一般には、合意の明確さ、不払いの期間や金額、話合いに応じたかどうかといった事情が総合的に考慮されると解説されています。

払えないまま放置するのが一番危ない

裏を返せば、解除のリスクを高めるのは「払わないこと」そのものより、「合意があるのに理由を示さず払わず、話合いにも応じないこと」です。払えない事情があるなら、期限前に地主へ伝え、支払方法や金額について協議する姿勢を見せ、経過を書面やメールで残すことが重要です。

更新料と地代を混同しない──地代の支払いは止めない

地代の滞納は解除の典型的な理由になる

更新料の交渉がこじれたときに特に注意したいのが、地代(土地の賃料)の支払いです。更新料は数十年に一度の一時金ですが、地代は毎月・毎年支払う契約の中心的な義務です。地代の滞納が続けば、それ自体が契約解除の理由になり得ます。「更新料で揉めているから地代も止める」という対応は、借地人様にとって最も不利な選択です。

地主が地代を受け取らないときは供託する

更新料で対立すると、地主が「更新料を払うまで地代は受け取らない」と地代の受領を拒むことがあります。このような場合、地代を提供したうえで受領を拒まれたのであれば、民法第494条に基づき、地代を法務局に供託(お金を公的機関に預けて支払ったのと同じ効果を得る手続)することで、地代の支払義務を果たすことができます。受領を拒まれたからといって地代を払わずにいると、後に滞納を理由とした解除を主張されるおそれがあります。

更新料を払わなくても法定更新はあり得る

借地借家法第5条は、期間満了時に建物があり、借地人が更新を請求したとき、または土地の使用を継続するときは、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなすと定めています(法定更新)。地主がこれを拒むには、遅滞なく異議を述べ、かつ正当の事由が必要です(同法第6条)。更新料を払えないことだけで、直ちに借地を失うわけではありません。

ただし、契約書の更新料特約が法定更新の場合にも適用されるかどうかは争点になりやすく、判断が分かれ得ます。平成4年8月1日より前に設定された旧法借地権の更新は、旧借地法のルールで判断されます(借地借家法附則第6条)。更新拒絶や立ち退きの話にまで発展した場合は、借地の更新拒絶と立ち退き料もあわせてご覧ください。法律上の見通しは弁護士にご確認ください。

借地の更新料が高すぎると感じたら確認したいこと

「相場」として言われる数字の出どころ

借地の更新料の相場としては、「更地価格の3〜5%程度」「借地権価格の5%程度」といった数字がよく紹介されます。ただし、これらは弁護士や不動産会社の解説で一般的な目安として紹介されているもので、法律や裁判所が定めた基準ではありません。目安の出どころと限界は借地権の更新料の相場と支払い義務で詳しく整理しています。

想定されるケースで請求額を比べる

目安の数字に当てはめると、請求額がどの程度の水準か見当をつけることができます。以下は説明のための仮の数値です。

比較の対象計算式金額
地主からの請求額更地価格5,000万円 × 6%300万円
更地価格の3%とした場合5,000万円 × 3%150万円
更地価格の5%とした場合5,000万円 × 5%250万円
借地権価格の5%とした場合3,000万円(借地権割合60%)× 5%150万円

このケースでは、請求額300万円は一般に言われる目安の上限より高い水準です。ただし、目安より高いから不当、低いから妥当とは言い切れません。次に述べるとおり、更新料の妥当性は地代の水準や契約の経緯とあわせて判断する必要があるからです。

更新料には借地非訟がない

借地権を第三者に売るときの譲渡承諾料や、建て替えの承諾料は、地主と合意できなければ借地非訟(裁判所が地主の承諾に代わる許可を与える手続)を申し立て、裁判所に金額を定めてもらう道があります(承諾料と借地非訟の手続は、本体サイトの借地の譲渡承諾料・増改築承諾料と借地非訟の解説で詳しく扱っています)。

これに対して、更新料の額を裁判所に定めてもらう借地非訟の手続はありません。更新料は当事者の話合いで決めるしかなく、決まらなければ支払義務そのものを訴訟などで争うことになり得ます。だからこそ、交渉の段階で「なぜその金額なのか」という根拠を持っておくことが重要です。

鑑定士の視点:更新料は地代とセットで評価する

評価基準は更新料を地代改定の要素として扱う

不動産鑑定評価基準は、継続賃料(すでに続いている賃貸借の賃料を改定する場合の賃料)を求める際、契約の更新を契機とする改定で更新料が支払われるときは、その額を総合的に勘案するとしています。つまり鑑定評価の考え方では、更新料と地代は別々の話ではなく、一体として評価される関係にあります。

地代が低く据え置かれてきた借地では更新料で差を埋める考え方もある

たとえば、周辺の水準から見て適正と考えられる地代が年18万円なのに、実際の地代が長年年12万円に据え置かれてきた借地を想定します(説明のための仮の数値)。この場合、地主は毎年6万円分、適正な水準より少ない収入に甘んじてきたことになります。更新後の20年間でこの差は単純合計で120万円になり、更新料の請求にはこうした差を埋める意味合いが含まれていると説明できる場合があります。

反対に、地代がすでに周辺の水準並みか、それ以上に設定されているなら、高額の更新料を上乗せすると地主側の受け取りが過大になるおそれがあります。「更新料が高すぎるかどうか」は、地代の水準を確認して初めて判断できるのです。

払えないときの選択肢は「減額」だけではない

更新料を地代とセットで考えると、交渉の選択肢も広がります。

選択肢内容注意点
分割払い更新料を数年に分けて支払う支払計画と遅れた場合の扱いを書面に残す
支払時期の猶予資金の準備ができるまで待ってもらう期限を明確にする
地代への織り込み一時金を減らし、その分地代を上げる更新後の期間全体の負担で比較する
金額の減額根拠を示して請求額の引下げを求める地代の水準とあわせて説明する

いずれの方法でも、合意した内容は更新契約書などの書面にしておきましょう。

更新料が払えないときの進め方

ステップ1:契約書と過去の支払いを確認する

最初に、契約書の更新料特約の有無と文言、更新後の期間、前回の更新時の書面や領収書を確認します。過去に更新料を支払った実績があっても、それが将来の更新時にも支払う合意だったとは限らないとする下級審の裁判例が多いと紹介されています。前回の支払がどのような経緯だったかを整理しておきましょう。

ステップ2:請求額の根拠を地主に尋ねる

次に、請求額がどのような考え方で算出されたのかを地主に尋ねます。更地価格の何%として計算したのか、地代の水準は考慮されているのかが分かれば、交渉の論点がはっきりします。

ステップ3:価格の根拠を用意して協議する

地主と金額の考え方が大きく異なる場合は、中立の鑑定士に借地権価格や適正な地代の水準を調べてもらい、その結果を話合いの土台にする方法があります。当事務所では、交渉の目安を知るための価格等調査報告書が15万円〜、地代の増額・減額の根拠となる継続地代の鑑定評価書が40万円〜、相手方から示された金額や資料の検証(セカンドオピニオン)が5万円〜です(いずれも税別)。調停・訴訟など争訟案件は、価格等調査30万円・鑑定評価書60万円(税別)を起点にお見積りします。詳しくは料金をご覧ください。

CASE STUDY想定されるケース(架空)

更新料300万円を請求され、一括では払えない借地人

説明のための想定されるケースです。

  • 旧法借地権で、借地人は築年数の古い自宅に居住。契約書には「更新時は協議のうえ更新料を支払う」との条項がある
  • 地主は更地価格の6%として300万円を請求。地代は20年以上改定されていない
  • 借地人は一括での支払いが難しく、地主は「払わないなら更新しない」と伝えてきた

このような場面では、まず条項の効力と法定更新の見通しを弁護士と確認し、並行して地代の水準と借地権価格を把握します。地代が周辺より低ければ、更新料の一部を地代の改定に振り替える、残りを分割で支払うといった組み合わせを提案できます。根拠のないまま交渉すると「全額払うか、払わないか」の二択になりがちですが、数字を共有できれば落としどころを探しやすくなります。

まとめ

借地権の更新料が払えないからといって、直ちに契約を解除されるわけではありません。ただし、支払の合意があるのに放置すれば解除のリスクが高まるため、根拠を確認したうえで早めに話し合うことが大切です。

要点を振り返ります。

  • 借地借家法に更新料の規定はなく、支払義務は契約書の特約や当事者の合意によって生じる
  • 不払いによる解除が認められるかは、合意の経緯や話合いの状況などから信頼関係が壊れたかで判断される(最高裁昭和59年4月20日判決)
  • 更新料で揉めても地代の支払いは止めない。地主が受け取らないときは供託する
  • 「更地価格の3〜5%」などの相場は一般的な目安にすぎず、更新料には借地非訟の手続がない
  • 更新料の妥当性は地代の水準とセットで判断でき、分割払いや地代への織り込みも選択肢になる

更新料の請求額に悩んでいる借地人様(借地人様へ)、更新料の水準を説明したい地主様、更新料の紛争を担当される弁護士の先生方に、借地権価格・地代水準の根拠を中立の立場からお示しします。法律上の見通しは弁護士にご確認ください。弁護士に依頼されていない方には、弁護士のご紹介も可能です。

借地権の更新料や地代の妥当性でお悩みの借地人様・地主様、借地の紛争を扱う士業の先生は、当事務所の初回無料相談をご利用ください。ぜひ一度ご相談ください。

REFERENCES

  1. 借地借家法(e-Gov法令検索)第5条・第6条・附則第6条
  2. 民法(e-Gov法令検索)第494条
  3. 不動産鑑定評価基準(国土交通省)各論第2章

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

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