増改築・リフォームの承諾料の相場は?外壁塗装・大規模修繕で承諾が要る場面を不動産鑑定士が整理
借地の増改築・リフォームの承諾料の相場は更地価格の1〜5%が目安とされます。外壁塗装や大規模修繕で承諾が必要になる場面の線引き、旧法借地権の朽廃の論点、承諾料が妥当かを確かめる方法を不動産鑑定士が整理します。

「借地の家の外壁を塗り直したいけれど、地主さんに承諾料を払わないといけないのだろうか」「水回りをまとめてリフォームしたら、増改築の承諾料を請求された」。借地上に家を持つ方から、増改築やリフォームの承諾料の相場について、このようなご相談をいただくことがあります。
結論からお伝えします。増改築の承諾料の相場としてよく紹介されるのは、一部の改築で更地価格の1%〜3%、全面的な改築で更地価格の3%〜5%程度という目安です。一方で、外壁塗装や設備の交換のような通常の修繕は、増改築禁止特約があっても承諾料が問題にならないことが多いとされています。承諾料が必要かどうかは、工事の規模よりもまず契約書の文言と、工事が建物の主要な構造に手を入れるかどうかで分かれます。
この記事では、リフォームの承諾料が必要になる場面と不要な場面の線引き、大規模修繕で地主が慎重になる理由、そして承諾料の額が妥当かを確かめる方法を、私たち鑑定士の視点から整理します。全面的な建て替えの承諾料は建替え承諾料で詳しく解説していますので、ここではリフォーム・修繕に焦点を当てます。
増改築・リフォームの承諾料の相場は更地価格の1〜5%が目安
一般に紹介される目安とその出典
増改築の承諾料に法律上の定めはありません。相場として紹介されることが多いのは、日本地主家主協会(地主・家主の団体)のウェブ解説にある目安です。借地非訟(借地に関する紛争を裁判所が扱う手続)で裁判所が増改築を許可する場合について、同解説では、全面的な改築は更地価格の3%〜5%、一部の改築は更地価格の1%〜3%程度とされることが多いと紹介されています。
ここでいう更地価格とは、借地権などの権利が付いていない状態の土地の価格です。借地権の譲渡承諾料が「借地権価格」に対する割合で語られるのに対し、増改築の承諾料は「更地価格」に対する割合で語られる点に注意してください。
相場は「裁判所が許可する場合の目安」にすぎない
この1%〜5%という数字は、あくまで借地非訟で裁判所が承諾料を定める場合の目安です。当事者同士の交渉額を拘束するものではなく、実際の合意額は、工事の内容、借地権の残存期間、これまでの地代や更新の経過などによって上下します。「相場は3%だから3%で決まり」と考えるのではなく、目安の中で自分の工事がどこに位置するかを考えることが大切です。
工事の内容と承諾料の目安の対応
リフォームの内容ごとに、承諾料がどう問題になりやすいかを一般的に整理すると次のとおりです。
| 工事の内容 | 承諾の要否(一般論) | 承諾料の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 外壁塗装・屋根の塗り替え | 不要とされることが多い | ― | 事前の連絡は円満のため有益 |
| キッチン・浴室など設備の交換 | 不要とされることが多い | ― | 間取り変更を伴うと別 |
| 増築・間取りを大きく変える改修 | 必要になりやすい | 更地価格の1〜3% | 床面積・構造の変更に注意 |
| 柱・土台まで入れ替える全面改修 | 必要になりやすい | 更地価格の1〜5% | 建替えに近い扱いのことも |
区分はあくまで一般的な整理です。どの区分に当たるかは契約書の文言と工事の実態で判断されるため、判断に迷う場合は弁護士にご確認ください。
外壁塗装・水回りのリフォームに承諾料は必要か
出発点は契約書の「増改築禁止特約」
借地上の建物は借地人の所有物です。そのため、契約に特段の定めがなければ、建物をどう修繕するかは原則として借地人の自由です。問題になるのは、借地契約書に「建物を増改築するときは地主の書面による承諾を得る」といった特約(増改築禁止特約・増改築制限特約)がある場合です。
借地借家法には増改築を一律に自由とする強行規定(当事者の合意で変えられない規定)がないため、増改築禁止特約そのものは有効と解されています。まずは契約書を取り出し、「増改築」「改築」「大修繕」など、何が制限されているのかを確認してください。
通常の修繕は承諾不要とされることが多い
外壁塗装、屋根の葺き替えを伴わない塗り直し、キッチンや浴室、給湯器の交換といった工事は、建物を維持・保全するための通常の修繕と考えられ、増改築禁止特約があっても地主の承諾は不要とされることが多いと紹介されています。借地の外壁塗装で承諾料を求められた場合も、まずは「その工事が特約で制限された工事に当たるのか」を冷静に確認するところから始めましょう。
もっとも、承諾が法的に不要であっても、足場の設置や工事車両の出入りで地主や近隣に影響が出ることはあります。着工前に工事内容を伝えておくことは、無用な誤解を避けるうえで有益です。
主要構造部に手を入れる工事は「改築」とみなされるおそれ
注意が必要なのは、名目は「リフォーム」でも、柱・土台・梁・外壁の下地・屋根の骨組みといった主要な構造部分を取り替える工事です。こうした工事は、建物の寿命を実質的に延ばすものとして「改築」や「大修繕」に当たると判断されるおそれがあります。
裁判例でも、内装中心の工事は特約で禁止された「大修繕」に当たらないとして解除を認めなかったもの(東京地裁平成26年5月19日判決)がある一方、工事内容を地主に十分説明しなかった経緯などから信頼関係の破壊を認めたもの(東京地裁平成28年4月28日判決)もあると紹介されています。工事の中身と進め方の両方が見られていると考えてください。
大規模修繕の承諾料と、旧法借地権で地主が慎重になる理由
「大修繕」まで制限する特約がある場合
契約書によっては、増改築だけでなく「大修繕」も地主の承諾事項としていることがあります。この場合、増改築と同程度に地主の利益に影響する修繕、たとえば主要構造部の大がかりな補修や、構造体を残して内外装をすべて作り替えるスケルトンリフォームは、承諾が必要になりやすいといえます。借地の大規模修繕で承諾料を求められたときは、この「大修繕」条項の有無がひとつの分かれ目です。
旧借地法の「朽廃」と大規模修繕
地主が大規模修繕に慎重になる背景には、旧法借地権(平成4年8月1日より前に設定された借地権)特有の事情があります。旧借地法2条1項ただし書は、存続期間の定めがない借地権について、期間満了前に建物が朽廃(自然の経過で朽ち果て、建物としての効用を失うこと)したときは借地権が消滅すると定めています。更新後の期間についても同様の規定が準用されます(同法5条1項)。現在の借地借家法には、この朽廃による消滅の規定はありません。
つまり旧法借地権では、古い建物に大がかりな修繕を施すと、本来なら朽廃で土地が戻ってくるはずだった時期が先に延びる可能性があります。最高裁昭和42年9月21日判決は、地主が異議を述べていたのに建物の耐用年数を大きく延ばす修繕が行われた事案で、修繕がなければ朽廃したであろう時期に借地権は終了すると判断したと紹介されています。どのような場合にこの考え方が当てはまるかは事案ごとの判断になるため、詳しくは弁護士にご確認ください。旧法借地権の全体像は旧法借地権で解説しています。
スケルトンリフォームは建替えに近い扱いになることも
構造体だけを残して間取りも設備も一新するスケルトンリフォームは、見た目も機能も新築に近づきます。地主から見れば、建替えと同じように土地が戻る時期が遠のくことになるため、承諾料も一部改築ではなく全面改築に近い水準で提示されることがあります。工事の規模が大きいほど、見積りの段階で地主と話し合っておくことが重要です。リフォームに住宅ローンを使う場合は、金融機関から地主の承諾書を求められることもあります。詳しくは借地権付き建物に住宅ローンは付きにくい?をご覧ください。
無断リフォームのリスクと、承諾が得られないときの進め方
無断の増改築でも直ちに解除とは限らない
増改築禁止特約に違反して無断で工事をすると、地主から契約解除を主張されるおそれがあります。ただし、最高裁昭和41年4月21日判決は、増改築が土地の通常の利用上相当で、地主に著しい影響を及ぼさないため信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは、特約に基づく解除権の行使は信義則上許されないと判断しています。
とはいえ、「解除されないかもしれない」ことは、無断で工事をしてよい理由にはなりません。紛争になれば時間も費用もかかります。承諾が必要か迷う工事は、事前に相談するのが最も確実です。
承諾を得るときに書面へ残したい事項
地主の承諾を得られた場合は、口頭で済ませず書面に残しておきましょう。一般に、次のような点を明記しておくと後の行き違いを防げます。
- 工事の内容と範囲(図面や見積書を添付する)
- 承諾料の額と支払時期
- 工事によって借地権の存続期間や地代の扱いを変えるかどうか
協議が調わないときは借地非訟の増改築許可
増改築を制限する借地条件があり、土地の通常の利用上相当とすべき増改築について協議が調わないときは、借地人は裁判所に「地主の承諾に代わる許可」を申し立てることができます(借地借家法17条2項)。裁判所は当事者間の利益の衡平を図るため、承諾料の支払などの財産上の給付を命じることができ(同条3項)、原則として鑑定委員会の意見を聴いて判断します(同条6項)。手続の流れは借地非訟と鑑定をご覧ください。建替えを拒否された場合の対応は借地権の建て替えを地主に拒否されたら?でも整理しています。
鑑定士の視点:リフォーム承諾料が妥当かを確かめる方法
仮の数値で承諾料の幅を試算する
承諾料が更地価格に対する割合で語られる以上、金額はまず更地価格の見立てで決まります。
築40年の木造住宅を大規模にリフォームするケース
説明のための仮の数値です。実際の承諾料は契約内容や個別の事情で大きく異なります。
旧法借地権の土地(更地価格を4,000万円と仮定)に建つ築40年の木造住宅で、借地人が外壁塗装と水回りの交換に加え、柱や土台の一部を入れ替えて間取りも変える改修を計画したとします。
- 外壁塗装・設備交換だけなら:承諾料は問題にならないことが多い
- 一部改築(1%〜3%)とみた場合:40万円〜120万円
- 全面改築(3%〜5%)に近いとみた場合:120万円〜200万円
同じ工事でも、どの区分に当たるとみるかで承諾料の幅は大きく変わります。さらに、更地価格を4,000万円とみるか5,000万円とみるかで、全面改築の上限は200万円から250万円へと50万円変わります。
工事で借地権の価値がどれだけ変わるかを見る
不動産鑑定評価基準は、借地権の価格を求める際に総合的に勘案する事項として、「借地権の態様及び建物の残存耐用年数」や「契約締結の経緯並びに経過した借地期間及び残存期間」を挙げています。大規模な修繕で建物の残存耐用年数が延びれば、借地人が土地を使い続けられる見込みは大きくなり、借地権の価値は高まります。反対に、地主にとっては土地が戻る時期が遠のき、底地の価値に影響します。
承諾料は、この当事者間の利益の変化を調整するものと考えると、「なぜその金額なのか」を議論しやすくなります。外壁塗装のように建物の寿命をほとんど変えない工事で高額な承諾料が求められている場合も、逆に寿命を大きく延ばす工事なのに承諾料がゼロとされている場合も、この視点から見直す余地があります。
地代の改定とセットで考える
不動産鑑定評価基準は、契約条件の変更に伴って地代を改定する場合、条件変更承諾料や増改築承諾料の額を勘案して継続賃料を求めるとしています。承諾料の授受にあわせて地代の見直しを打診されることもあるため、承諾料と地代をまとめて検討するのが実務的です。地代の考え方は、本体サイトの地代の相場の解説もご参照ください。
まとめ
増改築・リフォームの承諾料は、「相場の率」を当てはめる前に、その工事が承諾の必要な工事に当たるのかを見極めることが出発点です。
要点を振り返ります。
- 増改築の承諾料の相場は、一部改築で更地価格の1%〜3%、全面改築で3%〜5%程度が一般的な目安(借地非訟で裁判所が定める場合の目安)
- 外壁塗装や設備交換などの通常の修繕は、増改築禁止特約があっても承諾不要とされることが多い
- 柱・土台など主要構造部に手を入れる工事や、大修繕を制限する特約がある場合は承諾が必要になりやすい
- 旧法借地権では朽廃の規定があるため、地主は大規模修繕に慎重になりやすい
- 協議が調わなければ借地非訟の増改築許可(借地借家法17条2項)という手段がある
- 承諾料の妥当性は、更地価格の見立てと、工事で借地権の価値がどれだけ変わるかから確かめられる
リフォームや大規模修繕を計画していて承諾料の額に納得がいかない借地人様、工事の承諾にあたって適正な承諾料を知りたい地主様は、更地価格と借地権の価値の見立てから整理することをおすすめします。契約違反や解除など法的な判断は弁護士に、税務は税理士にご確認ください。まだ弁護士に依頼されていない方には、弁護士のご紹介も可能です。
増改築・リフォームの承諾料や、借地非訟を扱う士業の先生からの評価のご相談も承っています。費用は料金ページをご覧ください。初回のご相談は無料です。ぜひ一度ご相談ください。
REFERENCES
免責事項
本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。
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