借地権割合と借家権割合の違いとは?自分の土地に貸家があるときの評価(貸家建付地)と時価を不動産鑑定士が解説
借地権割合と借家権割合の違いを、自分の土地に貸家がある地主様・税理士の方向けに整理。自用地・貸宅地・貸家建付地で評価がどう変わるかを試算で示し、一律の割合と鑑定評価の時価がずれる理由を不動産鑑定士が解説します。

「借地権割合と借家権割合は何が違うのか」「誰にも土地を貸していないのに、自分の土地の評価に借地権割合が出てくるのはなぜか」。自分の土地にアパートや貸家を建てている地主様や、その相続の相談を受ける税理士の方から、こうした疑問をいただくことがあります。どちらも路線価図や財産評価基準書に出てくる「割合」で、名前も似ているため混同されがちです。
結論からお伝えします。借地権割合は「土地を借りて建物を建てている人の権利」の割合で、地域ごとにA(90%)〜G(30%)が定められています。借家権割合は「建物を借りて住んでいる人の権利」の割合で、現在は全国一律30%です。自分の土地に自分で貸家を建てている場合、その土地は「貸家建付地(かしやたてつけち)」として、この二つの割合を掛け合わせた分だけ相続税評価が下がります。誰かに土地を貸していなくても借地権割合が登場するのはこのためです。
ただし、この計算は課税のための統一ルールであり、その土地と貸家が市場でいくらで取引されるかを示すものではありません。この記事では、二つの割合の違いと貸家建付地の評価の仕組みを整理したうえで、私たち鑑定士の視点から、時価との違いを解説します。税額の計算には踏み込みません。
借地権割合と借家権割合の違い
借地権割合は「土地を借りる権利」の割合
借地権(建物の所有を目的として他人の土地を借りる権利)の相続税評価は、「自用地としての価額×借地権割合」で求めます(財産評価基本通達27)。自用地としての価額とは、他人の権利が付いていない更地としての評価額です。
借地権割合は、借地事情が似ている地域ごとに国税局長が定め、路線価図では路線価の後ろのアルファベットで示されます。路線価のない地域では評価倍率表に記載されています。調べ方は借地権割合の調べ方で詳しく解説しています。
借家権割合は「建物を借りる権利」の割合
借家権(借地借家法が適用される建物の賃借権)の評価は、「家屋の評価額×借家権割合×賃借割合」で求めます(財産評価基本通達94)。借家権割合は国税局長が定める割合とされ、令和8年分の財産評価基準書(東京都)では「100分の30」と示されています。地域で差がある借地権割合と異なり、借家権割合は全国で同じ30%が用いられているのが現状です。
なお、借家権は権利金などの名称で取引される慣行のない地域では評価しないとされており(同通達94ただし書)、借家人が相続した借家権が相続財産として課税される場面はほとんどありません。借家権割合が実務で意味を持つのは、主に貸す側(大家)の土地・建物の評価を下げる場面です。
二つの割合を比べると
| 項目 | 借地権割合 | 借家権割合 |
|---|---|---|
| 対象となる権利 | 建物所有目的で土地を借りる権利 | 建物を借りる権利 |
| 割合の水準 | 地域ごとにA90%〜G30% | 全国一律30% |
| 確認先 | 路線価図・評価倍率表 | 財産評価基準書 |
| 主に使う場面 | 借地権・底地・貸家建付地の評価 | 貸家・貸家建付地の評価 |
借地権割合は自分の土地でも使われる?場面別の整理
自分で住んでいる・空き地のままなら使わない
自分の土地に自宅を建てて住んでいる場合や、更地のままの場合は「自用地」として評価し、借地権割合は使いません。親の土地に子が無償で家を建てている場合(使用貸借)も、土地を使う権利の価額はゼロとして扱われ、相続時には自用地として評価されます(国税庁タックスアンサーNo.4552)。
他人に土地を貸して地代をもらっていれば「貸宅地」
他人が地代を払って建物を建てている土地は、底地(借地権が付いている土地の所有権)として、「自用地としての価額×(1−借地権割合)」で評価します(財産評価基本通達25)。借地権割合が60%の地域なら、自用地の40%の評価です。
自分で貸家を建てていれば「貸家建付地」
自分の土地にアパートや貸家を建てて第三者に貸している場合は、次の算式で評価します(財産評価基本通達26、国税庁タックスアンサーNo.4614)。
貸家建付地の評価額=自用地としての価額−自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合
土地を借りている人はいないのに借地権割合が出てくるのは、借家人が建物を借りることを通じて、その敷地も間接的に利用しているためです。借家人の敷地利用の権利を、「借地権割合×借家権割合」で測っていると考えると理解しやすいでしょう。なお、借地権の取引慣行がないと認められる地域でも、貸家建付地の計算では借地権割合を20%として扱うとされています(同通達26(1))。
賃貸割合は、アパートの各部屋のような独立部分のうち、相続などの時点で実際に貸している部分の床面積の割合です。継続して貸していた部屋が一時的に空室になっていた場合は、貸していたものとして扱える場合があります(同通達26(注)2)。
借地の上に貸家を建てている場合
借地人が借りた土地の上にアパートを建てて貸している場合は、その借地権を「貸家建付借地権」として、借地権の評価額からさらに借家権割合×賃貸割合の分を差し引いて評価します(財産評価基本通達28)。このとき地主側の土地は、建物が貸家であっても通常の底地(貸宅地)として評価されます。
数値で見る貸家建付地と底地の評価の差
想定されるケースの試算
同じ土地で評価がどう変わるか
説明のための仮の数値です。奥行や形状などの補正は考慮しておらず、税額の計算を示すものではありません。
- 自用地としての評価額:1億円、借地権割合:60%(D)、借家権割合:30%
| 土地の使い方 | 算式 | 評価額 |
|---|---|---|
| 自宅・更地(自用地) | 1億円 | 1億円 |
| 自分の貸家・満室 | 1億円×(1−0.6×0.3×1.0) | 8,200万円 |
| 自分の貸家・8割入居 | 1億円×(1−0.6×0.3×0.8) | 8,560万円 |
| 他人に土地を貸す(底地) | 1億円×(1−0.6) | 4,000万円 |
貸家建付地の減額は底地よりずっと小さい
試算のとおり、自分で貸家を建てた場合の減額は18%にとどまり、他人に土地を貸した底地の60%減とは大きな差があります。貸家の場合、地主は建物の所有者でもあり、借家人が退去すれば土地と建物を自由に使える状態に戻れるのに対し、底地は借地人の建物が建っている限り土地が戻りにくいからです。この違いが、掛け算の形に表れています。
賃貸割合で評価が動く
同じ建物でも、空室が多いほど賃貸割合が下がり、評価額は自用地に近づきます。賃貸割合は相続などの時点の状況で判定されるため、空室の状況は評価に直結します。具体的な申告上の判断は税理士にご確認ください。
鑑定評価では借家権割合をどう扱うか
貸家とその敷地は収益価格を標準に評価する
不動産鑑定評価基準は、貸家及びその敷地の鑑定評価額について、実際の賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めて得た収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定するとしています(各論第1章第2節Ⅱ)。あわせて、将来の賃料改定の実現性、授受された一時金、残存の借家期間と建物の残存耐用年数、取引慣行と取引利回り、定期建物賃貸借か否かなどを総合的に勘案するとしています。
つまり鑑定評価では、「自用の価格から一律に18%を引く」という考え方はとりません。実際の家賃、空室の状況、建物の古さ、入居者との契約内容を一つずつ確かめ、その貸家と敷地が生み出す収益から価格を求めます。
借家権割合は比較考量の一要素にとどまる
鑑定評価基準は、借家権の取引慣行がある場合の借家権の鑑定評価額について、当事者間の個別的事情を考慮して求めた比準価格を標準とし、自用の建物及びその敷地の価格から貸家及びその敷地の価格を控除して得た価格を比較考量するとしています。借家権割合により求めた価格は、借家権割合が求められる場合に「比較考量する」ものの一つという位置づけです(各論第1章第3節Ⅲ)。
さらに同基準は、借家権の価格といわれるものには、賃貸人から明渡しを求められた借家人が立退きによって事実上失う経済的利益のように、当事者間で個別的な形をとって現れるものがあるとしています。貸家の明渡しには借地借家法28条の正当事由が求められ、立退料はその判断要素の一つとされています。こうした場面では、全国一律30%という割合では説明がつかないことがほとんどです。立退きの考え方は借地の更新拒絶と立ち退き料の解説もご参照ください。
評価額と時価がずれる典型
課税上の評価と時価がずれやすいのは、たとえば次のような場合です。
- 長年入居している借家人の家賃が相場より大幅に低く、明渡しの見通しも立たない古い戸建貸家
- 建物が古く、近い将来に建替えや大規模修繕が必要なアパート
- 利回りを重視する投資需要が強く、自用の土地建物と同程度以上の価格で取引される地域の収益物件
前の二つは時価が評価額より低く、最後の一つは高くなる方向です。底地の相続税評価と時価のずれについては、底地の相続税評価と時価の乖離で詳しく比較しています。賃貸アパートの価格の決まり方は、相続の観点から賃貸アパートの相続評価の解説でも整理しています。
地主様・税理士の先生が押さえたいポイント
申告上の評価と時価を分けて考える
貸家建付地や貸宅地の評価は、相続税・贈与税の申告のためのものです。一方、遺産分割で誰が貸家と敷地を取得するかを決める場面や、借家人・借地人との交渉、売却を検討する場面では、その不動産の実際の収益と市場性に基づく時価が土台になります。申告上どの評価によるべきかは税務の専門領域ですので、税理士にご確認ください。
時価の根拠をそろえる資料
貸家とその敷地の時価を検討するときは、次の資料があると前提を明らかにしやすくなります。
- 賃貸借契約書(契約期間、更新条件、定期建物賃貸借か否か)
- レントロール(各部屋の家賃・入居時期・空室の状況)
- 修繕履歴と建物の図面・建築時期が分かる資料
- 借地の上の貸家であれば、土地の賃貸借契約書と地代の改定経緯
借地や底地が絡む場合は、土地の権利関係と建物の賃貸関係の二層を分けて確認することが、説明のつく価格への近道です。
まとめ
借地権割合と借家権割合は、どちらも相続税などの評価で権利の重さを測るための割合ですが、対象となる権利も水準も異なります。
要点を振り返ります。
- 借地権割合は土地を借りる権利の割合で地域ごとにA90%〜G30%、借家権割合は建物を借りる権利の割合で全国一律30%
- 自宅や更地、親族間の無償の貸し借り(使用貸借)の土地は自用地として評価し、借地権割合は使わない
- 自分の土地に貸家を建てると貸家建付地として「借地権割合×借家権割合×賃貸割合」の分だけ評価が下がる(試算では18%減)
- 他人に土地を貸した底地の減額(試算では60%減)とは、土地が戻る見通しの違いから大きな差がある
- 鑑定評価では一律の割合ではなく、実際の賃料と契約内容に基づく収益価格を標準に、貸家とその敷地の価格を求める
自分の土地に貸家や借地を抱える地主様、貸家建付地や底地を含む相続を担当される税理士の先生方は、申告上の評価とは別に、時価の根拠を中立の不動産鑑定士の評価で確認しておくと、遺産分割や交渉の場面で説明のつく数字を持てます。
借地権・底地や収益物件の鑑定評価書は40万円〜、金額の目安を知るための価格等調査報告書は15万円〜、相手方資料の検証(セカンドオピニオン)は5万円〜です(いずれも税別)。詳しくは料金のご案内をご覧ください。底地・借地権や貸家とその敷地の価格でお悩みの地主様、借地非訟・底地評価を扱う士業の先生は、初回無料相談をご利用ください。ぜひ一度ご相談ください。
REFERENCES
免責事項
本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。
借地権・底地の価格や承諾料を不動産鑑定士がどう評価するか、費用や進め方は借地・底地の不動産鑑定のページでまとめています。
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