価格と評価の実務

底地の利回り相場はどのくらい?地代から逆算する底地価格の考え方を不動産鑑定士が解説

底地の利回り相場を知りたい地主様・投資家様へ。表面利回りと実質利回りの違い、J-REITの事業用底地の水準、住宅地の底地で利回りが低くなる理由、地代から底地価格を逆算する収益価格の考え方を試算つきで不動産鑑定士が解説します。

著者:吉田 健人·読了 約13分
底地の利回り相場はどのくらい?地代から逆算する底地価格の考え方を不動産鑑定士が解説

「底地の利回り相場はどのくらいなのか」「地代収入に対して、この底地の価格は高いのか安いのか」。底地(借地権が付いている土地の所有権)を持っている地主様や、底地の購入を検討している投資家の方から、こうした疑問をよくお聞きします。インターネットでは「底地の利回りは2〜4%程度」といった数字が紹介されることが多いものの、その数字をそのまま自分の底地に当てはめてよいのか、迷っている方も多いのではないでしょうか。

結論からお伝えします。**底地の利回りは、底地の「性格」を表す数字ではなく、地代・経費・価格の組み合わせから計算される「結果」**です。同じ地代でも、いくらで買うかによって利回りは2倍にも3倍にも変わります。公表データで確認できる水準としては、J-REIT(上場不動産投資信託)が保有する事業用の底地の純収益ベースの利回りが平均4.4%(三菱UFJ信託銀行「不動産マーケットリサーチレポート VOL.210」2022年6月)ですが、これは地代が高めに設定された店舗・工場などの敷地の話で、住宅地の旧法借地の底地とは前提が大きく異なります。

この記事では、底地の利回りの計算方法、利回りが低くなりやすい理由、地代から底地価格を逆算する収益価格の考え方を、想定されるケースの試算を使って私たち鑑定士が整理します。

底地の利回りの計算方法と「相場」の見方

表面利回りと実質利回りの違い

底地の利回りには、大きく分けて次の2つがあります。

種類計算式特徴
表面利回り地代年額 ÷ 底地価格経費を引かない。数字が大きく見える
実質利回り(NOI利回り)(地代年額 − 年間経費)÷ 底地価格固定資産税等を差し引いた実際の手取りベース

NOI(Net Operating Income=地代収入から固定資産税・都市計画税や管理費用を差し引いた純収益)で見るのが実質利回りです。底地では建物の修繕費や空室リスクがほとんどない一方、土地の固定資産税・都市計画税は地主が負担するため、地代に対する税負担の割合が大きくなりがちです。表面利回りだけで比べると、手取りを過大に見積もってしまいます。

公表データで確認できる事業用底地の水準

前述の三菱UFJ信託銀行のレポートは、J-REITが開示している事業用底地のデータを集計しています。それによると、純収益ベースの利回りは平均4.4%・中央値4.3%(サンプル122件)、地代は固定資産税・都市計画税の平均12.2倍・中央値9.9倍(サンプル37件)という水準でした。

J-REITが保有する底地は、店舗・オフィス・工場・倉庫などの事業用建物の敷地です。借地人は事業会社が中心で、底地の売買にあわせて地代が改めて設定される例もあり、地代の水準は住宅地より高めになります。「底地 利回り リート」と調べて出てくる数字は、この種類の底地のものだと理解しておく必要があります。

住宅地の旧法借地の底地は前提が違う

一方、地主様が先祖代々お持ちの住宅地の底地は、旧法借地権(平成4年8月1日より前に設定された借地権)であることが多く、地代は長年ほとんど改定されていないケースが珍しくありません。実務では、住宅地の地代は固定資産税・都市計画税の3倍程度に収まっている例がよく見られ、事業用底地の10倍前後とは大きな開きがあります。地代の水準そのものの考え方は、本体サイトの地代の適正額の考え方をご覧ください。

底地の利回りが低くなりやすい3つの理由

1. 地代に対して固定資産税等の負担が重い

住宅が建っている土地には住宅用地の特例(地方税法第349条の3の2・第702条の3)があり、200㎡以下の部分は固定資産税の課税標準が6分の1、都市計画税が3分の1に軽減されます。それでも、地代が固定資産税等の3倍程度であれば、地代の約3分の1が税金で消える計算です。地主の手取りは、表面的な地代よりかなり小さくなります。

2. 地代を市場水準まで上げにくい

借地借家法第11条は、土地の租税負担や価格の変動、近傍類似の土地の地代との比較によって地代が不相当になったときに、増減を請求できると定めています。ただし、協議がまとまらなければ調停・訴訟が必要になり、裁判所が認める継続地代(既存の契約を前提とした地代)は、新規に貸す場合の地代より低い水準にとどまるのが一般的です。地代を一気に引き上げて利回りを改善することは、現実には容易ではありません。

3. 土地が返ってくる時期が読めない

旧法借地権や普通借地権では、期間が満了しても正当事由がなければ地主は更新を拒めません(借地借家法第5条・第6条)。土地を自分で使える時期が見通せないため、将来の土地の返還による利益を当てにしにくく、第三者の買い手は地代収入だけで価格を判断しがちです。これも、底地の価格が低く、表面的な利回りが高めに出やすい理由のひとつです。

地代から底地価格を逆算する「収益価格」の考え方

底地の地代・利回りと価格の関係

利回りの式を変形すると、底地価格=純収益(NOI)÷ 利回りになります。鑑定評価では、この考え方で求める価格を収益価格(将来得られる収益をもとに求める価格)と呼びます。不動産鑑定評価基準は、底地の鑑定評価額について、実際支払賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めて得た収益価格と、比準価格(取引事例から求める価格)を関連づけて決定するとしています(各論第1章第1節)。

つまり、利回りの「相場」を知りたいという問いは、「この地代の底地を、何%の利回りで評価するのが合理的か」という問いに置き換えられます。

CASE STUDY想定されるケース(架空)

想定されるケース:住宅地の旧法借地の底地

説明のための仮の数値です。税額は負担調整措置等を考慮しない簡略計算で、実際の評価では契約内容・地域の取引慣行・将来の一時金等を個別に検討します。

  • 土地:住宅地150㎡、更地としての時価6,000万円(仮)
  • 固定資産税評価額:時価の7割程度として4,200万円(仮)
  • 固定資産税:4,200万円 × 6分の1 × 1.4% = 9.8万円
  • 都市計画税:4,200万円 × 3分の1 × 0.3% = 4.2万円
  • 地代(年額):固定資産税等14万円の3倍として42万円(月3.5万円)
  • 諸経費:固定資産税等14万円+管理の手間等2万円 = 16万円
  • 純収益(NOI):42万円 − 16万円 = 26万円

この底地を、どの価格で見るかによって利回りは次のように変わります。

底地価格の水準底地価格表面利回り実質利回り
更地価格の10%600万円約7.0%約4.3%
更地価格の15%900万円約4.7%約2.9%
更地価格の32%1,920万円約2.2%約1.4%

最下段は、路線価(時価の8割程度と仮定)に借地権割合60%の地域の底地割合40%を掛けた、相続税評価に近い水準です。同じ地代でも、相続税評価に近い価格で見ると実質利回りは1%台にとどまり、事業用底地の平均4.4%と同程度の利回りを求める買い手からは、600万円前後(更地価格の約1割)の価格しか出てこない計算になります。

利回りを求める買い手ほど価格は低くなる

上の試算のとおり、純収益が同じなら、買い手が求める利回りが高いほど底地価格は低くなります。底地の買取業者が高めの利回りを前提に価格を組み立てるのは、借地人との交渉の手間や時間、出口の不確実性を見込むためです。提示額の前提の確認方法は底地の買取業者の提示額は妥当?で詳しく解説しています。また、相続税評価額と時価がなぜ食い違うのかは底地の相続税評価と時価はなぜ乖離する?をご覧ください。

地代以外の「一時金」と「復帰価値」も価格の要素

不動産鑑定評価基準は、底地の価格を構成する経済的利益として、地代から諸経費を差し引いた部分に加え、期間の満了等によって土地が返ってくることによる利益の現在価値を挙げています。更新料や、借地権の譲渡・建替えの際の承諾料(地主が承諾の対価として受け取る一時金)の見込みがあれば、その分だけ価格は上乗せされ得ます。地代だけから計算した利回りは、底地の価値の一部しか映していない点に注意が必要です。

底地の利回りを見るときの注意点

誰に売るかで「適正な利回り」は変わる

評価基準は、借地権者が底地の併合を目的として買う場合を、限定価格(特定の当事者間でのみ合理性が認められる価格)の例として挙げています。借地人が底地を買えば土地が完全な所有権に戻るため、第三者の投資家よりも高い価格、つまり低い利回りでも合理性が認められる場合があります。底地の価格水準の全体像は底地の価格・買取相場で整理しています。

投資判断は利回りの数字だけで決めない

底地は、空室リスクや建物の修繕負担がない点で安定した資産と見られることがあります。一方で、地代の改定が難しい、借地人との関係調整に手間がかかる、売却先が限られるといった特有の事情もあります。利回りの高低だけで購入や売却を判断することはお勧めしません。本記事の試算は計算の仕組みを示すためのもので、特定の底地への投資を推奨するものではありません。

税金の扱いは税理士に確認する

底地の売却では譲渡所得税、保有中は地代収入に対する所得税や住民税などがかかります。手取りの利回りや売却後の手残りを具体的に計算する場合は、税理士にご確認ください。当事務所は宅建業者ではないため、底地の売買の仲介や買取りは行いません。売却を進める場合は、地元の宅建業者をご紹介できます(紹介料は頂きません)。

鑑定士に相談すると分かること

地代・経費・利回りの前提を中立に検証する

底地の価格は、地代の水準、諸経費、利回り、将来の一時金、土地が返ってくる見込みといった前提の積み重ねで決まります。私たち鑑定士は、売買の当事者ではない中立の立場で、それぞれの前提が妥当かを検証します。買取業者や相手方から提示された金額の前提を確認するセカンドオピニオンは5万円〜(税別)です。

価格の根拠を書面で残す

借地人との売買交渉や親族間での承継に使う場合、価格の根拠を書面で残しておくと話し合いが進めやすくなります。目安を知るための価格等調査報告書は15万円〜、借地権・底地の正式な鑑定評価書は40万円〜(いずれも税別)です。詳しくは料金をご覧ください。

まとめ

底地の利回りは地代・経費・価格から計算される結果であり、「相場の数字」をそのまま当てはめるのではなく、前提を分解して見ることが大切です。

要点を振り返ります。

  • 底地の利回りは表面利回りと実質利回り(NOI利回り)で大きく異なり、固定資産税等を差し引いた実質で見る
  • J-REITが保有する事業用底地の実質利回りは平均4.4%だが、地代水準・借地人の属性が住宅地の旧法借地の底地とは異なる
  • 住宅地の底地は地代が低く、改定もしにくく、土地の返還時期も読めないため、価格が低く表面的な利回りが高めに出やすい
  • 底地価格は「純収益 ÷ 利回り」の収益価格が基本で、更新料・承諾料や土地の返還による利益も価格の要素になる
  • 借地人に売る場合は限定価格として、第三者に売る場合より高い価格に合理性が認められることがある

底地の売却や承継を考えている地主様、底地の購入を検討している投資家様、地主様から相談を受ける税理士・弁護士の先生方は、地代と価格の関係を整理するところから始めてみてください。

底地の価格や地代・利回りの前提が妥当かどうかでお悩みの方は、当事務所の初回無料相談をご利用ください。ぜひ一度ご相談ください。

REFERENCES

  1. 不動産鑑定評価基準(国土交通省)各論第1章第1節
  2. 借地借家法(e-Gov法令検索)第5条・第6条・第11条
  3. 三菱UFJ信託銀行「不動産マーケットリサーチレポート VOL.210」(2022年6月)

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

借地権・底地の価格や承諾料を不動産鑑定士がどう評価するか、費用や進め方は借地・底地の不動産鑑定のページでまとめています。

FREE CONSULTATION

鑑定が必要かどうかのご相談だけでも歓迎です

記事に関連するお悩みについて、不動産鑑定士に直接ご相談いただけます。

関連記事

底地の買取業者の提示額は妥当?査定の前提をチェックする4つの視点を不動産鑑定士が解説
価格と評価の実務

底地の買取業者の提示額は妥当?査定の前提をチェックする4つの視点を不動産鑑定士が解説

底地の買取業者から提示された金額が妥当か判断できない地主様へ。提示額が低くなりやすい構造、前提とした地代・期間・承諾料・借地人との交渉見込みの確認方法、鑑定評価の収益価格との比べ方を鑑定士の視点で解説します。

読了 約9分

底地の相続税評価と時価はなぜ乖離する?貸宅地評価と鑑定評価基準の底地価格を不動産鑑定士が比較
士業の先生へ

底地の相続税評価と時価はなぜ乖離する?貸宅地評価と鑑定評価基準の底地価格を不動産鑑定士が比較

底地の相続税評価(貸宅地評価)は「自用地評価額×(1−借地権割合)」で求めますが、市場で成立する時価とは一致しないことが少なくありません。乖離が生じる理由と、その方向が一方向ではないことを、不動産鑑定評価基準の底地価格の考え方と比較して解説します。

読了 約9分

借地権付き建物の売買相場はどう決まる?借地権と建物を「足し算」できない理由を不動産鑑定士が解説
価格と評価の実務

借地権付き建物の売買相場はどう決まる?借地権と建物を「足し算」できない理由を不動産鑑定士が解説

借地権付き建物の売買相場は借地権価格と建物価格の足し算ではありません。一体としての減価が生じる理由、借地権割合と賃料差額、鑑定評価の3手法、築年数別の想定ケースの試算で、価格の決まり方を不動産鑑定士が解説します。

読了 約14分

電話で相談無料相談を申込む