価格と評価の実務

定期借地権の底地の売却・買取価格はどう決まる?事業用定借の評価を不動産鑑定士が解説

定期借地権の底地の買取・売却を考える地主様・事業者様へ。事業用定期借地権の底地価格が地代収入と期間満了時の復帰価値で決まる仕組み、残存期間ごとの試算、借地人が買う場合の考え方、売却前に確認すべき契約条項を不動産鑑定士が解説します。

著者:吉田 健人·読了 約14分
定期借地権の底地の売却・買取価格はどう決まる?事業用定借の評価を不動産鑑定士が解説

「定期借地権の底地は買い取ってもらえるのか」「事業用定期借地権で貸している土地を、契約期間の途中で売却したらいくらになるのか」。コンビニやドラッグストア、ロードサイド店舗に土地を貸している地主様や、そうした底地の購入を検討している事業者の方から、こうしたご相談をいただきます。底地(借地権が付いている土地の所有権)と聞くと「更地の1〜3割でしか売れない」というイメージを持つ方も多く、定期借地権の場合も同じなのか迷われるのは当然です。

結論からお伝えします。定期借地権の底地は、期間満了で土地が更地として確実に戻ってくるため、旧法借地権や普通借地権の底地とは価格の決まり方がまったく異なります。価格を左右するのは「残存期間」と、期間満了時に戻ってくる土地の価値(復帰価値)です。残存期間が短いほど更地価格に近づき、条件によっては更地価格の7〜9割程度で評価される場合もあります。

この記事では、定期借地権の種類と底地の性格、事業用定期借地権の底地価格が決まる仕組み、売却・買取の前に確認すべき契約のポイントを、想定されるケースの試算を使って私たち鑑定士が整理します。

定期借地権の底地とは?普通の底地との違い

定期借地権は3種類ある

定期借地権(契約期間の満了で更新されずに確定的に終了する借地権)は、平成4年8月1日に施行された借地借家法で設けられた制度です。主に次の3種類があります。

種類存続期間主な用途契約の方式
一般定期借地権(第22条)50年以上定期借地権付きマンション・戸建書面(公正証書等)
事業用定期借地権等(第23条)10年以上50年未満店舗・物流施設などの事業用建物公正証書に限る
建物譲渡特約付借地権(第24条)30年以上期間満了時に地主が建物を買い取る方式の定めなし

事業用定期借地権等は、専ら事業の用に供する建物(居住用を除く)の所有を目的とするもので、平成20年1月1日施行の改正で存続期間が「10年以上20年以下」から「10年以上50年未満」に広がりました。ロードサイド店舗の敷地などで広く使われており、「定期借地権 底地 買取」と調べる方の多くは、この事業用定期借地権の底地をお持ちの地主様です。

期間満了で土地が「確実に」戻ってくる

旧法借地権や普通借地権では、期間が満了しても正当事由がなければ地主は更新を拒めず、土地がいつ戻ってくるのか見通せません。これに対し事業用定期借地権では、存続期間10年以上30年未満なら法律上当然に、30年以上50年未満なら特約によって、契約の更新、建物の築造による期間延長、建物買取請求権(期間満了時に借地人が地主へ建物の買取りを求める権利)が排除されます(借地借家法第23条第1項・第2項)。原則として、期間満了時には借地人が建物を取り壊し、更地で返還します。

この「土地が戻ってくる時期が契約で確定している」という性格こそが、定期借地権の底地の価格を普通の底地より大きく引き上げる理由です。

評価基準も契約内容を個別に見ることを求めている

不動産鑑定評価基準は、底地の価格を「実際支払賃料から諸経費等を控除した部分の期間に対応する経済的利益」と「その期間の満了等によって復帰する経済的利益の現在価値」で構成されるものと定めています(各論第1章第1節)。そのうえで、定期借地権の付着している宅地を評価する際には、通常の勘案事項に加えて「借地期間満了時の建物等に関する契約内容」も総合的に勘案するよう求めています。建物を取り壊して返すのか、地主が買い取るのかによって、戻ってくる価値が変わるからです。

事業用定期借地権の底地価格が決まる仕組み

底地価格=地代収入の現在価値+復帰価値の現在価値

事業用定期借地権の底地の価格は、次の2つを足し合わせて考えます。

  1. 地代収入の現在価値:残りの契約期間に受け取る地代から、固定資産税・都市計画税などの経費を差し引いた純収益を、現在の価値に割り戻したもの
  2. 復帰価値の現在価値:期間満了時に更地として戻ってくる土地の価値を、現在の価値に割り戻したもの

将来のお金を現在の価値に割り戻す際の率を割引率(将来の収益の不確実性や運用機会を反映した利率)と呼びます。借地人の信用力が高く、地代が安定しているほど、割引率は低く(価格は高く)見込まれます。

残存期間が短いほど更地価格に近づく

この式からわかるとおり、残存期間が短くなるほど、復帰価値の割り戻しが小さくなり、底地の価格は更地価格に近づいていきます。逆に、契約したばかりで残存期間が長い場合は、地代収入の比重が大きくなり、底地の価格は地代の水準に強く影響されます。

CASE STUDY想定されるケース(架空)

想定されるケース:ロードサイド店舗の事業用定期借地権の底地

説明のための仮の数値です。更地価格は将来も変わらないものと仮定し、割引率は5%の単一の率で計算しています。実際の評価では、地代改定の条項、借地人の信用力、建物の取壊し費用の確保状況などを個別に検討します。

  • 土地:郊外幹線道路沿いの店舗用地、更地価格1億円(仮)
  • 契約:事業用定期借地権・存続期間30年・期間満了時は借地人が建物を取り壊して更地返還
  • 地代(年額):360万円
  • 経費:固定資産税・都市計画税60万円+管理費用等10万円 = 70万円
  • 純収益:360万円 − 70万円 = 290万円
  • 割引率:5%(仮)

残存期間ごとの底地価格は次のとおりです。

残存期間地代収入の現在価値復帰価値の現在価値底地価格(更地比)
25年約4,087万円約2,953万円約7,040万円(約70%)
15年約3,010万円約4,810万円約7,820万円(約78%)
5年約1,256万円約7,835万円約9,091万円(約91%)

たとえば残存期間15年の場合、地代収入の現在価値は「290万円×15年・5%の複利年金現価率10.3797」、復帰価値の現在価値は「1億円×15年後・5%の複利現価率0.4810」で求めています。

住宅地の旧法借地権の底地は、更地価格の1〜3割程度の水準で見られることが多いのに対し、同じ「底地」でも事業用定期借地権の底地は、試算上7割を超える水準になります。地代と価格の関係そのものについては底地の利回り相場はどのくらい?で詳しく解説しています。

事業用底地の利回りの公表データ

参考として、三菱UFJ信託銀行「不動産マーケットリサーチレポート VOL.210」(2022年6月)によると、J-REIT(上場不動産投資信託)が保有する事業用底地の純収益ベースの利回りは平均4.4%・中央値4.3%でした。J-REITが保有する底地は店舗・物流施設などの事業用建物の敷地で、投資家が事業用の底地を収益資産として一定の利回りで取得している実態がうかがえます。ただし、個別の底地の利回りは立地や借地人、残存期間によって大きく異なるため、この数値をそのまま当てはめることはできません。

定期借地権の底地は誰が買い取るのか

借地人(テナント企業)が買い取る場合

借地人が底地を買い取れば、土地と建物の所有者が同じになり、期間満了後も店舗を使い続けられます。評価基準は、借地権者が底地を買い取る場合には、同一所有者に帰属することによる市場性の回復等に応じた経済価値の増分が生じる場合があることに留意すべきとしています(各論第1章第1節)。出店を続けたい借地人にとっては、第三者の投資家より高い価格にも合理性が認められる場合があります。

投資家・事業会社が買い取る場合

事業用定期借地権の底地は、地代が比較的高めに設定され、借地人も事業会社であることが多いため、安定した収益を求める投資家や事業会社が買い手になります。この場合の価格は、前述の地代収入と復帰価値の考え方で、買い手が求める利回りから逆算されるのが基本です。

当事務所は売買の仲介は行わない

当事務所は宅建業者ではないため、底地の売買の仲介や買取りは行いません。売却を進める場合は、地元の宅建業者をご紹介できます(紹介料は頂きません)。私たち鑑定士の役割は、売買の当事者ではない中立の立場で、提示された価格や想定している価格の根拠を検証することです。買取業者の提示額の見方は底地の買取業者の提示額は妥当?もご覧ください。

売却・買取の前に確認すべき契約のポイント

公正証書で契約されているか

事業用定期借地権等の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならないとされています(借地借家法第23条第3項)。契約書の形式や内容に不備があると、定期借地権として扱われるかどうかが争点になるおそれがあり、その場合は底地の価格が大きく変わります。契約の有効性の判断は法律問題ですので、疑問がある場合は弁護士にご確認ください。

地代改定・中途解約・建物取壊しの条項

価格に影響する主な契約条項は次のとおりです。

  • 地代改定条項:一定期間ごとの改定や物価連動の定めがあるか。地代を据え置く特約があるか
  • 中途解約条項:借地人が期間途中で解約できる定めがあるか。解約時の違約金の有無
  • 建物の取壊し・原状回復:期間満了時に誰の負担で取り壊すか。借地人の業績が悪化したときに取壊し費用が確保されているか
  • 保証金・敷金:底地を売却すると、借地人に返す保証金の返還義務を買主が引き継ぐのが通常で、その分は売買価格で調整されます

中途解約の可能性が高い、取壊し費用の確保が不十分といった事情があれば、地代収入の継続性や復帰価値の確実性が下がり、割引率を高く見込む(価格を低く見る)要因になります。

税金の扱いは税理士に確認する

事業用定期借地権の底地の相続税評価は、財産評価基本通達に基づき、自用地としての価額から定期借地権等の価額を差し引いて求めるのが原則で、時価とは一致しないことがあります。底地の相続税評価と時価の関係は底地の相続税評価と時価はなぜ乖離する?で整理しています。売却時の譲渡所得税や、相続・贈与の税額は、税理士にご確認ください。

鑑定士に相談すると分かること

残存期間と契約条件を織り込んだ価格を求める

定期借地権の底地は、契約の種類、残存期間、地代の水準と改定条項、期間満了時の建物の扱い、借地人の信用力といった前提によって価格が大きく変わります。私たち鑑定士は、これらを一つずつ確認し、地代収入と復帰価値の両面から価格の根拠を示します。

費用の目安

借地権・底地の正式な鑑定評価書は40万円〜、目安を知るための価格等調査報告書は15万円〜、買取業者や相手方から提示された金額を検証するセカンドオピニオンは5万円〜です(いずれも税別)。詳しくは料金をご覧ください。底地の価格水準の全体像は底地の価格・買取相場でも整理しています。

まとめ

定期借地権の底地は、期間満了で土地が確実に戻ってくるため、旧法借地権や普通借地権の底地とは別の物差しで価格を考える必要があります。

要点を振り返ります。

  • 定期借地権には一般定期借地権・事業用定期借地権等・建物譲渡特約付借地権の3種類があり、事業用定期借地権の存続期間は10年以上50年未満
  • 事業用定期借地権の底地価格は「地代収入の現在価値」と「期間満了時の復帰価値の現在価値」の合計で考える
  • 残存期間が短いほど更地価格に近づき、試算では更地価格の7〜9割程度になる場合もある
  • 借地人が買い取る場合は、同一所有者に帰属することによる増分から、第三者より高い価格に合理性が認められることがある
  • 公正証書の有無、地代改定・中途解約・建物取壊しの条項、保証金の承継が価格を左右する

事業用定期借地権で土地を貸していて売却や承継を考えている地主様、定期借地権の底地の購入を検討している事業者様、こうした案件の相談を受ける税理士・弁護士の先生方は、まず契約内容と残存期間を整理するところから始めてみてください。

定期借地権の底地の価格や、提示された買取額が妥当かどうかでお悩みの方は、当事務所の初回無料相談をご利用ください。ぜひ一度ご相談ください。

REFERENCES

  1. 不動産鑑定評価基準(国土交通省)各論第1章第1節
  2. 借地借家法(e-Gov法令検索)第22条・第23条・第24条
  3. 三菱UFJ信託銀行「不動産マーケットリサーチレポート VOL.210」(2022年6月)

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

借地権・底地の価格や承諾料を不動産鑑定士がどう評価するか、費用や進め方は借地・底地の不動産鑑定のページでまとめています。

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