価格と評価の実務

国有地の底地の買取価格は妥当?財務局の払下げ価格の決まり方を不動産鑑定士が解説

財務局から国有地の底地の買受けを勧められた借地人の方へ。払下げ価格(評定価格)が国有財産評価基準でどう算定されるか、路線価ベースの特例評価の計算式、鑑定評価の限定価格との比較、交渉の余地や同時売却という選択肢を、試算つきで不動産鑑定士が解説します。

著者:吉田 健人·読了 約14分
国有地の底地の買取価格は妥当?財務局の払下げ価格の決まり方を不動産鑑定士が解説

「財務局から、借りている国有地の底地を買い取りませんかという通知が届いた」「提示された払下げ価格が高いのか安いのか、判断がつかない」。国有地を借りて家を建てている借地人の方から、こうしたご相談をいただきます。相手が国である以上、価格は正しいはずだと思いつつも、数千万円の買い物を根拠も分からないまま決めてよいのか、不安になるのは当然です。

結論からお伝えします。国有地の底地の買取価格(払下げ価格)は、財務省の「国有財産評価基準」に沿って算定され、面積や金額が一定規模以下の貸付中の土地は、相続税路線価を基にした計算式で求められるのが通常です。規模の大きい土地は不動産鑑定士の鑑定評価を基に決まります。国は適正な対価を下回って売ることができないため値引き交渉の余地はほとんどありませんが、計算の前提(地積・借地権割合・時点)を確かめ、買い取るべきか、いつ買うかを判断することはできます。

この記事では、財務局の底地の払下げ価格がどのように決まるのか、その価格をどう読めばよいのかを、想定されるケースの試算を使って私たち鑑定士が整理します。

国有地の底地を借地人が買い取る仕組み

なぜ国が底地を持っているのか

国が持つ土地のうち、建物の敷地として個人や法人に貸している土地は「貸付中の財産」と呼ばれます。相続税の物納などで国が取得した土地には、もともと借地人が家を建てている貸宅地が含まれており、国が地主の立場を引き継いでいるケースが少なくありません。借地人から見れば、地主が個人から国に代わっただけで、地代(国の用語では貸付料)を払い続ける関係は変わりません。

財務局は借地人への売却を原則としている

財務省理財局長通達「貸付中の財産の売却促進について」(令和5年6月28日付財理第1877号、令和7年4月改正)は、借地契約中の国有地について、原則として買受勧奨により借地人への売却に努めるとしています。財務局は貸付料の改定期や契約更新期に買受けを勧める通知を送り、必要と認めるときは国有財産評価基準に基づいて算定した概算価格を提示します。「財務省から底地を購入しませんかと言われた」というご相談の多くは、この買受勧奨によるものです。

なお、この通達の対象からは定期借地権を設定している土地が除かれています。定期借地の底地の価格の考え方は定期借地権の底地の売却・買取価格はどう決まる?で解説しています。

借地人が買わない場合はどうなるか

借地人に買受けの意思がなく、借地人に売るよりも一般競争入札で売る方が国にとって経済合理性があると認められる場合、財務局は借地人にあらかじめ伝えたうえで、底地を入札にかけることができます(同通達第1の3)。入札で底地を取得するのは、多くの場合、底地の買取業者や投資家です。国から民間の地主に代われば、地代の改定や更新料、建替えの承諾をめぐる交渉の相手も変わります。「今は買わない」という選択にも、こうした将来の変化が伴うことは知っておきたい点です。

国有地の底地の払下げ価格はどう決まるか

国有財産評価基準と「評定価格」

国の財産の売払い価格は、財政法第9条と予算決算及び会計令第80条第2項の趣旨を踏まえた「適正な対価」でなければなりません。財務省の「国有財産評価基準について」(平成13年3月30日付財理第1317号)は、この適正な対価を「評定価格」と呼び、原則として不動産鑑定士の鑑定評価書を徴し、審査を経て決定すると定めています。

一定規模以下の底地は路線価ベースの「特例評価」

ただし、同基準は、貸付中の財産のうち宅地で面積がおおむね1,000平方メートル以下、かつ概算評価額がおおむね5,000万円以下のものについて、国の職員による簡易的な評価(特例評価)を認めています。この場合の底地の評定価格は、次の算式で求めます。

評定価格 = 更地としての相続税評価額 × 時価倍率 × 時点修正率 ×(1 − 借地権割合)

時価倍率は原則として1.00、借地権割合は財産評価基本通達(相続税の路線価図に記載された割合)によるのが原則です。つまり、一般的な住宅地の国有地の底地は、相続税の貸宅地評価とほぼ同じ考え方で払下げ価格が決まることになります。相続税評価額は時価そのものではなく、路線価は地価公示価格の8割程度を目安に定められています。相続税評価と時価のずれについては底地の相続税評価と時価はなぜ乖離する?で詳しく比較しています。

規模の大きい底地は鑑定評価が基礎になる

面積や金額が上記の基準を超える底地、あるいは専門的な判断が必要な底地は、財務局が不動産鑑定業者に鑑定評価を委託し、その鑑定評価額を審査して評定価格を決めます。国有財産評価基準の審査項目には、底地について「借地人が底地を買い取る場合における市場性の回復の程度及び増分価値とその配分方法」が挙げられています。これは不動産鑑定評価基準でいう限定価格(借地人が底地を併合する場合のように、特定の当事者の間でのみ合理性が認められる価格)の考え方です。

想定されるケースで払下げ価格を試算する

路線価ベースの特例評価の計算例

CASE STUDY想定されるケース(架空)

想定されるケース:住宅地の国有地を借りて自宅を建てている借地人

説明のための仮の数値です。実際の評定価格は財務局が個別に算定します。

  • 土地:住宅地150㎡、正面路線価32万円/㎡、借地権割合60%(路線価図のC)
  • 画地補正(奥行・形状など):なしと仮定
  • 時点修正率:1.02(仮)
項目計算金額
更地の相続税評価額32万円×150㎡4,800万円
時価倍率・時点修正後×1.00×1.024,896万円
底地の評定価格×(1−0.6)約1,960万円

概算評価額(路線価×(1−借地権割合)×面積)は1,920万円で、5,000万円以下・1,000㎡以下の基準を満たすため、特例評価の対象になる想定です。評定価格は上位3桁に端数整理されます。

鑑定評価の考え方と比べてみる

同じ土地を、私たち鑑定士が限定価格の考え方で見るとどうなるかを、仮の数値で並べます。更地の時価は路線価の水準を地価公示並みに引き直して約6,000万円、第三者が買う場合の底地の価格を1,200万円、借地権の価格を3,000万円と仮定します。

項目金額(仮)考え方
更地(完全所有権)の価格6,000万円底地と借地権が一つになった状態
底地+借地権の合計4,200万円1,200万円+3,000万円
併合による増分価値1,800万円6,000万円−4,200万円
増分を折半した底地の限定価格2,100万円1,200万円+900万円

この仮定では、特例評価の約1,960万円は限定価格の目安と大きくは離れていません。路線価ベースの払下げ価格は「国だから高い」とは限らず、地域や個別の事情によっては割安になることも割高になることもあります。大切なのは、数字の大小を印象で判断せず、どの前提で計算された価格なのかを分けて確認することです。限定価格と増分価値の配分の考え方は借地権と底地の同時売却とは?でも解説しています。

払下げ価格を確認するときの4つのポイント

確認する点見るべき内容
地積登記面積と実測面積のどちらで計算しているか
借地権割合路線価図の割合が地域の実情と合っているか
画地補正不整形・間口狭小などの補正が反映されているか
価格時点評定価格の有効期間(原則6か月)と路線価の改定時期

国有財産評価基準は、路線価図の借地権割合によることが著しく実情に沿わない場合には、意見書(不動産鑑定士等の専門家の意見)によることができるとしています。借地権の取引慣行が強い地域かどうかは、払下げ価格を左右する大きな要素です。

払下げ価格は交渉できるのか

値引き交渉の余地はほとんどない

国は、評定価格を基に定めた予定価格を下回って売り払うことができません。そのため、民間の地主との売買のように「もう少し下げてほしい」という交渉は基本的に通りません。一方で、地積の違いや画地の個別事情など、計算の前提に事実と異なる点があれば、根拠を示して財務局に確認を求めることは考えられます。手続きや主張の進め方に法的な判断が伴う場合は、弁護士にご確認ください。

買うかどうか・いつ買うかの判断材料にする

払下げ価格の妥当性を確かめる目的は、価格を下げることよりも、買い取るべきかどうか、いつ買うべきかを判断することにあります。たとえば、毎年の地代と固定資産税の差、買い取った後に完全所有権として売却・建替えができる利点、住宅ローンなど購入資金の調達条件を比べて判断します。評定価格には有効期間があり、路線価の改定や地価の変動によって次回の提示額は上下し得ます。

底地の取得にかかる税金は税理士に確認

底地を買い取ると、登録免許税や不動産取得税などの負担が生じます。将来売却するときの取得費の扱いも含め、具体的な税額は税理士にご確認ください。

財務省の底地の同時売却という選択肢

借地権付建物と底地をまとめて第三者に売る

「底地を買う資金はないが、借地権付きの家を売りたい」という場合には、同時売却という方法があります。借地人が借地権付建物を第三者に売る際に、国が持つ底地もあわせてその第三者に売る仕組みです(同通達第1の2)。買主は完全な所有権として土地を取得できるため、借地権付建物だけを売る場合より買い手が見つかりやすくなります。

同時売却の手続きと注意点

借地人が依頼書を提出すると、財務局は物件情報をホームページに原則3か月掲載して買受希望者を募り、希望者が現れれば借地人と希望者が交渉します。国や財務局の委託業者は手数料を受け取りません。ただし、関東財務局の案内によれば、国が売る底地の価格は借地権付建物の価格とは関係なく、国の算出方法に基づく価格であり、借地権の譲渡には事前に国の承認が必要で、名義書換承諾料がかかる場合もあります。重要施設周辺など、同時売却を行わない地域もあります。

当事務所は宅建業者ではないため、借地権付建物の売買の仲介は行いません。売却を進める場合は、地元の宅建業者をご紹介できます(紹介料は頂きません)。

鑑定士に相談すると分かること

払下げ価格と市場での価値を並べて示す

私たち鑑定士は、財務局から提示された概算価格がどの算式・前提で計算されているかを読み解き、借地人が底地を併合した場合の価値、借地権付建物のまま売る場合の価値と並べて整理します。「払下げ価格で買い取って完全所有権にする」「同時売却で手放す」「今は借り続ける」の3つを、同じ物差しで比べられるようにすることが目的です。

費用の目安

提示された概算価格の前提を確認するセカンドオピニオンは5万円〜、目安を知るための価格等調査報告書は15万円〜、借地権・底地の正式な鑑定評価書は40万円〜(いずれも税別)です。詳しくは料金をご覧ください。底地の価格水準の全体像は底地の価格・買取相場で整理しています。

まとめ

国有地の底地の払下げ価格は、国有財産評価基準に沿って機械的に算定されるため値引きの余地はほとんどありませんが、計算の前提を確かめ、買う・売る・借り続けるの判断に生かすことはできます。

要点を振り返ります。

  • 財務局は借地契約中の国有地について、借地人への売却(買受勧奨)を原則としている
  • 面積おおむね1,000㎡以下・概算評価額おおむね5,000万円以下の底地は、相続税評価額×時価倍率×時点修正×(1−借地権割合)の特例評価で価格が決まるのが通常
  • 規模の大きい底地は鑑定評価が基礎となり、借地人が買う場合の増分価値の配分(限定価格)が考慮される
  • 地積・借地権割合・画地補正・価格時点の4点は、提示価格を読むときの確認ポイントになる
  • 借地人が買わない場合は一般競争入札に付される可能性があり、同時売却という選択肢もある

財務局から買受勧奨の通知を受け取った借地人の方、国有地上の借地権付建物の売却を考えている方、国有地の借地を扱う弁護士・税理士の先生方は、まず提示価格の前提を分解するところから始めてみてください。

国有地の底地の買取価格や、借地権付建物の価値の妥当性でお悩みの方は、当事務所の初回無料相談をご利用ください。ぜひ一度ご相談ください。

REFERENCES

  1. 財務省理財局長通達「貸付中の財産の売却促進について」(令和5年6月28日付財理第1877号)
  2. 財務省理財局長通達「国有財産評価基準について」(平成13年3月30日付財理第1317号)
  3. 関東財務局「同時売却を検討している方へ」

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

借地権・底地の価格や承諾料を不動産鑑定士がどう評価するか、費用や進め方は借地・底地の不動産鑑定のページでまとめています。

FREE CONSULTATION

鑑定が必要かどうかのご相談だけでも歓迎です

記事に関連するお悩みについて、不動産鑑定士に直接ご相談いただけます。

関連記事

借地権と底地の同時売却とは?別々に売るより高くなる理由と代金の分け方を不動産鑑定士が解説
価格と評価の実務

借地権と底地の同時売却とは?別々に売るより高くなる理由と代金の分け方を不動産鑑定士が解説

借地権と底地の同時売却を検討する地主様・借地人様へ。別々に売るより高くなりやすい理由(併合による増分)、借地権割合・単独価格の比・増分の配分による代金の分け方の違い、進め方と注意点を試算つきで不動産鑑定士が解説します。

読了 約13分

底地の相続税評価と時価はなぜ乖離する?貸宅地評価と鑑定評価基準の底地価格を不動産鑑定士が比較
士業の先生へ

底地の相続税評価と時価はなぜ乖離する?貸宅地評価と鑑定評価基準の底地価格を不動産鑑定士が比較

底地の相続税評価(貸宅地評価)は「自用地評価額×(1−借地権割合)」で求めますが、市場で成立する時価とは一致しないことが少なくありません。乖離が生じる理由と、その方向が一方向ではないことを、不動産鑑定評価基準の底地価格の考え方と比較して解説します。

読了 約9分

定期借地権の底地の売却・買取価格はどう決まる?事業用定借の評価を不動産鑑定士が解説
価格と評価の実務

定期借地権の底地の売却・買取価格はどう決まる?事業用定借の評価を不動産鑑定士が解説

定期借地権の底地の買取・売却を考える地主様・事業者様へ。事業用定期借地権の底地価格が地代収入と期間満了時の復帰価値で決まる仕組み、残存期間ごとの試算、借地人が買う場合の考え方、売却前に確認すべき契約条項を不動産鑑定士が解説します。

読了 約14分

電話で相談無料相談を申込む