底地の担保評価はなぜ低い?金融機関が融資で見るポイントと鑑定評価の使い方を不動産鑑定士が解説
底地を担保に融資を受けようとした地主様へ。底地の担保評価が低くなる理由(時価×掛目・市場性・地代水準)、金融機関が確認する資料、限定価格が担保評価に反映されない理由、鑑定評価書の使いどころを、試算つきで不動産鑑定士が解説します。

「相続税の納税資金を借りようと底地を担保に出したら、銀行の担保評価が驚くほど低かった」「底地は担保に取れないと言われ、融資の話が進まない」。借地として貸している土地(底地)をお持ちの地主様から、こうしたご相談をいただくことがあります。
底地の担保評価が低くなりやすいのは事実です。結論からお伝えすると、金融機関は底地を「万一のときに売って回収できる額」で見ており、底地は買い手が限られ、地代収入も小さく、土地がいつ戻るかも読めないため、時価そのものが低いうえに、さらに掛目(担保評価額を時価より低く見積もる割合)がかかるからです。ただし、借地契約の内容や地代の水準によって評価は変わりますし、根拠のある時価を示せば話し合いの土台は変わります。
この記事では、底地の担保評価が低くなる理由、底地を担保に融資を受けるときに金融機関が確認するポイント、そして鑑定評価をどう使えるかを、想定されるケースの試算を交えて私たち鑑定士が整理します。なお、融資の可否や条件は金融機関ごとに異なり、ここで述べるのは一般的な傾向です。
底地の担保評価が低くなる3つの理由
担保評価は「処分して回収できる額」から考える
金融機関の担保評価は、返済が滞ったときに担保不動産を売却して、どれだけ回収できるかを見積もるものです。そのため、市場で成立する価格をそのまま使うのではなく、価格の変動や売却にかかる時間・費用を織り込んで、時価に一定の掛目をかけた額を担保評価額とするのが一般的です。掛目の水準は金融機関ごとの内部基準で決められており、公表されていません。
つまり、担保評価額は「時価×掛目」という構造になっています。底地の場合、この「時価」の段階ですでに更地より大きく下がり、そこに掛目がかかるため、所有者の感覚より低い数字になりやすいのです。
底地を買う人は限られる(市場性の低さ)
底地の所有者は、土地を自分で使うことができません。借地上の建物の登記がされていれば、借地権は第三者にも対抗できます(借地借家法10条)。抵当権の設定より前から対抗要件を備えた借地権があれば、競売で底地を取得した人も、借地権付きの土地として引き継ぐことになり、借地人に明け渡しを求めることはできません。
第三者の買い手から見ると、底地は「使えない土地を、低い地代を受け取るために持つ資産」です。買い手は底地を専門に扱う事業者や、借地人本人などに限られ、一般の住宅購入者や投資家の市場には乗りにくくなります。金融機関はこの処分のしにくさを重く見ます。
地代収入が小さく、土地が戻る時期も読めない
古くからの借地では、地代が長年据え置かれ、固定資産税・都市計画税(公租公課)を支払うと地主の手元に残る収益が、更地としての価格に比べてごく小さいことが少なくありません。しかも普通借地権や旧法借地権は更新が原則で、更新を拒絶するには正当の事由が求められます(借地借家法6条。旧法借地権の更新は旧借地法による)。土地が戻ってくる時期の見通しが立たないため、将来の価値も担保評価には織り込みにくいのが実情です。
底地を担保に融資を受ける場面と金融機関が見るポイント
地主が底地を担保にする典型的な場面
底地を担保にした融資が話題になるのは、たとえば次のような場面です。
- 相続税の納税資金や、相続人間の代償金(遺産分割で土地を取得した人が他の相続人に支払う金銭)を用意する
- 所有する別の土地にアパートや自宅を建てる際、追加の担保として底地を差し入れる
- 事業資金の借入れで、手元の不動産をまとめて担保に出す
いずれも、底地単体では十分な担保評価が出にくいため、他の不動産と組み合わせたり、底地以外の資金手当てと並行して検討したりすることが多くなります。相続税の納付方法(延納・物納を含む)の選択は税務の判断ですので、税理士にご確認ください。
金融機関が確認する主な資料
底地の担保評価では、金融機関は土地そのものに加えて、借地関係の中身を確認します。一般的には次のような資料が求められます。
| 確認項目 | 主な資料 | 担保評価への影響 |
|---|---|---|
| 契約内容 | 土地賃貸借契約書 | 書面がない・内容が不明確だと評価が慎重になる |
| 地代 | 地代の入金記録 | 滞納や極端に低い地代は収益面でマイナス |
| 借地上の建物 | 建物の登記事項証明書 | 借地人・構造・築年数から残存期間を推測する |
| 借地権の種類 | 契約書・設定時期 | 定期借地権は期間満了時の土地返還が見込める |
定期借地権(更新がなく期間満了で終了する借地権)の底地は、土地が戻る時期が確定しているため、普通借地権の底地より担保として評価しやすい傾向があります。定期借地権の底地の価格については定期借地権の底地の売却・買取価格の解説をご覧ください。
競売になった場合の扱いは法律の問題
底地に抵当権を設定した後で返済が滞れば、金融機関は底地を競売にかけることができます。このとき、既に対抗要件を備えた借地権がどう扱われるか、抵当権設定後に結ばれた借地契約がどうなるかといった点は、権利の優先関係に関わる法律問題です。個別の判断は弁護士にご確認ください。
数値で見る:底地の時価と担保評価額のイメージ
想定されるケースの前提
ここでは、説明のための仮の数値で、底地の時価と担保評価額の関係を見てみます。
地代収入から見た底地の時価と担保評価額
説明のための仮の数値で、計算も大幅に単純化しています。実際の鑑定評価では、期間満了等による復帰価値、将来の一時金、取引事例なども考慮します。掛目も金融機関によって異なります。
| 項目 | 金額・条件 |
|---|---|
| 更地としての価格 | 1億円 |
| 年間地代 | 150万円 |
| 公租公課などの諸経費 | 年40万円 |
| 地主の純収益 | 年110万円 |
純収益110万円を、仮に3.5%の利回りで還元すると、110万円÷3.5%で約3,140万円となります。これが地代収入から見た底地の価格のイメージで、更地価格の3割程度にとどまります。
金融機関がこの時価に、仮に7割の掛目をかけると、担保評価額は約2,200万円です。更地なら担保評価の出発点が1億円であるのに対し、底地では出発点そのものが小さくなることが分かります。
底地の利回りの考え方は底地の利回り相場の解説で詳しく取り上げています。
借地人が買う場合の価格は担保評価に反映されない
不動産鑑定評価基準は、底地を借地権者が買い取る場合には、土地と建物が同じ所有者のものになることで市場性が回復し、経済価値の増分が生じる場合があることに留意すべきとしています。特定の当事者の間でだけ成立する、いわゆる限定価格です。
一方で、金融機関の担保評価は「誰に売ることになっても回収できる額」を見るため、借地人だけが払える高い価格は、原則として前提にしません。「借地人なら高く買ってくれるはずだ」という地主の感覚と担保評価額がずれるのは、このためです。
地代の水準が担保評価を大きく左右する
上の試算で地代が年100万円だったとすると、純収益は60万円、同じ利回りで還元した価格は約1,710万円まで下がります。担保評価でも鑑定評価でも、地代の水準は底地の価値に直結します。地代が周辺の水準に比べて低いままになっていないかは、底地を持つうえで定期的に見直したい点です。地代の考え方は地代の相場の解説をご参照ください。
底地の担保評価で鑑定評価を使う場面
金融機関の内部評価と鑑定評価の違い
金融機関の担保評価の多くは、路線価や取引事例を使った内部の簡易な方法で行われます。これに対して不動産鑑定評価は、不動産鑑定評価基準に則り、底地であれば実際の地代に基づく収益価格と、類似の底地の取引事例から求める比準価格を関連づけて価格を求めます。担保目的の鑑定評価については、日本不動産鑑定士協会連合会が「担保不動産の鑑定評価に関する実務指針」(平成29年5月)を定めており、金融機関の融資や債権保全のための評価で鑑定士が準拠すべき実務が整理されています。
内部評価では、底地は一律に低く見積もられたり、担保価値を認められなかったりすることがあります。鑑定評価は、契約内容や地代、残存期間といった個別の事情を積み上げて価格の根拠を示す点が異なります。
鑑定評価書が役立つ場面
鑑定評価書を提出しても、金融機関が担保評価額をその額で認めるとは限りません。採否や掛目は金融機関の判断です。それでも、次のような場面では、根拠のある時価を示す意味があります。
- 金融機関の内部評価が、契約内容や地代を反映していないと考えられるとき
- 複数の金融機関に相談するにあたり、同じ根拠資料で説明したいとき
- 相続人間で、底地を担保に代償金を借りる人と他の相続人が、底地の価値を共有したいとき
底地の鑑定評価書の費用は40万円〜(税別)です。詳しくは料金ページをご覧ください。
借地人が底地を買い取るときの融資
反対に、借地人が地主から底地を買い取るための融資では、買取後は土地と建物が同じ所有者のものになるため、金融機関は完全な所有権の土地建物として担保を評価できます。底地単体を担保にするより融資の検討が進みやすい場面です。ただし、売買価格が時価とかけ離れていると、融資額や税務上の扱いに影響することがあるため、価格の根拠を整えておくことが大切です。借地上の建物への融資の考え方は借地権付き建物の住宅ローンの解説で取り上げています。
底地の担保価値を高めるために地主ができること
契約書の整備と地代の見直し
口頭で始まった借地や、契約書が古く内容があいまいな借地は、金融機関の確認に時間がかかり、評価も慎重になります。現在の契約内容を書面で確認し、地代が公租公課や周辺の水準に照らして低すぎないかを点検することが、担保評価の改善につながる第一歩です。地代の増額請求(借地借家法11条)や契約書の作り直しは借地人との合意や法的手続きが関わるため、法律面は弁護士にご確認ください。
所有権化(同時売却・交換)という選択肢
底地のままでは担保評価が伸びにくい以上、借地人と話し合い、底地を借地人に売る、借地権を買い戻す、土地を分けて交換する、あるいは借地権と底地を一緒に第三者へ売るといった方法で、権利関係を整理することも考えられます。完全な所有権になれば、担保評価の出発点は大きく変わります。同時売却の考え方は借地権と底地の同時売却の解説をご覧ください。なお、当事務所は宅地建物取引業者ではないため売買の仲介は行わず、売却をお考えの場合は地元の宅地建物取引業者をご紹介しています(紹介料は受け取りません)。
価格の根拠を持って交渉に臨む
融資の相談でも、借地人との交渉でも、「この底地はいくらなのか」という問いに根拠を持って答えられるかどうかで、話の進み方は変わります。担保評価が低いと言われたときこそ、その数字が何を前提にしているのかを分解し、時価の根拠と比べてみることをおすすめします。
まとめ
底地の担保評価が低いのは、時価そのものが更地より大きく低いうえに掛目がかかるためであり、契約内容や地代の水準、権利関係の整理によって評価の土台は変わります。
要点を振り返ります。
- 金融機関の担保評価は「時価×掛目」で、売却して回収できる額を見る
- 底地は買い手が限られ、地代収入が小さく、土地が戻る時期も読めないため時価が低くなりやすい
- 借地人だけが払える限定価格は、担保評価では原則として前提にされない
- 契約書・地代の入金記録・建物の登記・借地権の種類が確認のポイントになる
- 鑑定評価書は担保評価額を保証するものではないが、個別事情を反映した時価の根拠になる
- 所有権化(同時売却・交換)は担保評価の出発点を大きく変える選択肢になる
底地を担保に相続税の納税資金や建築資金の借入れを検討している地主様、底地の担保評価について顧客から相談を受ける金融機関や税理士の先生方は、まず担保評価額の前提と、底地の時価の根拠を分けて確認するところから始めてみてください。
底地の時価や担保評価の妥当性でお悩みの地主様、底地を含む融資・相続案件を扱う士業の先生は、当事務所の初回無料相談をご利用ください。ぜひ一度ご相談ください。
REFERENCES
免責事項
本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。
借地権・底地の価格や承諾料を不動産鑑定士がどう評価するか、費用や進め方は借地・底地の不動産鑑定のページでまとめています。
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